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PINEIDER


PINEIDER(ピナイダー) イタリア

 ピナイダーはイタリア フィレンツェの文具メーカーで、紙製品、筆記具、革製品などを販売しています。その創業は1774年で、200年以上の歴史があり、スタンダール、バイロン、ナポレオンらも愛用したとか。なお、最初のカタログには「ピネイダー」と記されていますが、「ピナイダー」が正式な発音だそうです。ドイツ系ってことですかね。

 それほど歴史のあるメーカーなのですが、日本に上陸したのは2018年の秋。ファーバーカステルやラミーを輸入する代理店がピナイダーの輸入を開始し、各地でお披露目したようで、2019年3月現在、いくつかの万年筆店で見かけるようになりました。2020年の輸入筆記具協会ペンカタログに収載されたので、今後は取扱店が増えていくと思われます。また、商品ラインナップも今後増えていくかもしれません。

 そして現在のオーナーはダンテ・デル・ベッキオ氏。つまり、ヴィスコンティの創業者の一人です。2017年にヴィスコンティを退任し、こちらを手がけるようになったとか。なるほどなと思いました。


LA GRANDE BELLEZZA GEMSTONES(ラ・グランデ・ベレッツァ・ジェムストーン) 生産終了品
14Kニブ、マグネットツイストロック式キャップ、両用式

 まだ上陸して半年も経っていないのに、入手してしまうのが悲しい習性。だって、面白いんだもん、これ。

 軸色はブラックストーン、ヘマタイトグレーが単色の黒と灰色、そして模様の入った軸がラピスブルー、ロードライトレッド、タイガーイエロー、マラカイトグリーン。計六色ですが、せっかくイタリア製を買うのなら、イタリアらしい模様入りの軸が良いかなと思いますし、良く売れているのは模様入りの軸だそうです。で、アメ横のM商店にあるのを知っていたので買いに行ったところ、残念ながらラピスブルーは売れていた。残る三色、どれも魅力的だったのですが、迷った末にタイガーイエローの細字をゲット。ジェムストーンは宝石・貴石のことですから、虎目石(タイガーズアイ)のイメージなのでしょうね。そもそも品名自体が「とても美しい宝石」という意味ですし。


        ピナイダー ラ・グランデ・ベレッツァ・ジェムストーン タイガーイエロー 万年筆 細字

 この色使い、そして磁石を使ったキャップロック。何となくヴィスコンティっぽい。初めて見た時にそう思ったのですが、ベッキオ氏が絡んでいたのね。納得しました。ただ、この磁石を使ったキャップロックは、ヴィスコンティのヴァンゴッホやレンブラントに採用されているマグネティックロックとは若干違います。ヴィスコンティのは胴軸に対し、キャップは360°どの位置でもロックし、キャップを外す時は嵌合式のようにキャップを押し上げて外すのですが、ピナイダーのこれはキャップと胴軸の位置関係によりロックしたり反発して浮き上がったりします。これによりロックされた状態からネジ式のように胴軸を回すと、磁石の反発によりキャップが浮き上がり、簡単に外れます(嵌合式のように押し上げても外れます)。ここも何気に進化しているのですね。そしてこの万年筆は、ペン尻にもマグネティックロックが仕込まれており、こちらはどの向きでもカチッと填るようになっています。かなり考えられた造りですね。ですが、数年使用していたら少々問題が生じました。このシステムはインナーキャップが磁石になっているのですが、わずかながら錆が浮いてきています。そのため、密着性が悪くなり、気密性は若干悪くなっているかな。なお、アヴァターURやヴィスコンティのマグネティックロックはキャップリングに磁石が仕込んでありますので、あまり心配は無いと思います。

 アヴァターもなかなか美しい軸で良いのですが、私にとってピナイダーはジェムストーン。この14KニブはQuill Nibという独特の物で、写真のように、両サイドに切れ込みが入っています。


        ピナイダーのQuill Nib。Quillは羽根ペンのこと。サイドに切れ込みの入った独特の形状。

 Quillは羽根ペンのことで、羽根ペンのしなやかさを再現したのでしょうか。そういえばクリップが何となく鳥の羽根に見えるのはそういう事なのね。パイロットのフォルカンのように大きく撓るわけでもなく、ペリカンのスーベレーンM1000に比べても撓りは少ない印象ですが、紙当たりは非常にソフト。もっと撓るかと思っていたのでその点は拍子抜けした感がありますが、書き味は非常に良い万年筆ですし、撓りすぎない分、万年筆にあまり慣れていない人でも意外と扱いやすいと思われます。海外の金ペンで、造りも凝っておりますので、お値段も・・なのですが、万年筆が好きな方は是非一度触って頂きたい、と思えるほど、素敵な万年筆です。なお、コンバーターはヴィスコンティのレンブラント用と全く同じ物でした。ということでちょいとイタズラし、元々付いていたコンバーターを抜いてヴィスコンティのレンブラント用コンバーターを差し込み、ペリカンのエーデルシュタイン タンザナイトを吸入して使っています。エーデルシュタインはドイツ語で宝石という意味で、タンザナイトも宝石の名。宝石繋がりですね。コンバーターをヴィスコンティに換えたのは、何となくヴィスコンティの面影があるためです。

 なお、お勧め品とはしていますが、イタリア製なので、しっかり試し書きして下さい。他メーカーでも同じ事なのですが、イタリア製は特にばらつきが多い印象なので。また、このシリーズは2021年のカタログから抜け落ちましたが、アヴァターURデラックスから同じようなニブの新製品が出たようです。