U-Maの音楽館

CARAN d'ACHE


CARAN d'ACHE(カランダッシュ) スイス

 前身は1915年に設立されたエクリドール鉛筆製造所。1924年に創業者のA.シュバイツァーがエクリドール鉛筆製造所を買収し、カランダッシュがスタートしました。元々鉛筆や画材のメーカーでしたが、現在では筆記具全般、画材に加え、革製品やライターなども手がけるブランドとなっています。2010年に1億円の万年筆を発売し、話題になりましたが、ボールペンにも定評があり、日本でも高い人気を誇ります。また、色鉛筆は発色が良く、美術系の専門家や学生らに多くの愛用者がいるようです。カランダッシュのボールペンには限定品が多く、日本限定モデルも度々発売されます。高級ブランドで価格設定も結構強気ですが、品質は確かですし、リーズナブルで使いやすい製品もあります。一番欲しいのはレマンコレクションのグランブルーなのですが、「じゅうよんまんえん」なんてとても手が出ません。


LEMAN COLLECTION(レマン コレクション)
18Kニブ、ネジ式キャップ、両用式

 鉛筆製造所をルーツに持つカランダッシュには、鉛筆のような六角軸の筆記具が多いのですが、レマンは通常の丸形。名称はレマン湖に由来しており、その南端にある都市が、カランダッシュの本社があるジュネーヴです。ジュネーヴ コレクションを発展させる形で誕生したシリーズで、レマン湖から受けたインスピレーションを形にしています。ランクとしてはバリアスの方が上ですが、個人的にはふくよかな軸のレマンの方が魅力的に思います。


        カランダッシュ レマン コレクション サファイアブルーゴールドプレート 万年筆 細字

 これは旧型で、だいぶ以前に生産を終了した物を中古で購入しました。旧タイプは天冠の赤地に金のCdAロゴで区別します。これが販売されていた頃はまだ、そこまで高価な物ではなかったのですが、今ではかなり高価になり、ちょっと手を出しづらいですね。47gとかなり重い万年筆ですが、キャップを外すと30gほど。しかも、筆記時の長さが収納時の長さよりも短い・・ってことは、キャップを外したまま書けという事ですね。実際キャップを挿すと、ラッカーにキャップを装着した痕跡が付きやすいようなので、キャップを挿して筆記する事はお勧めしません(この写真を撮る際も、キャップは緩く装着しています)。最近になってスリムタイプが追加されており、そちらの方が一般的には使いやすいサイズとなっています。

 18Kニブは重い軸をしっかりと受け止める、かなり腰の強いニブです。感触的には硬く感じますが、滑らかさはかなりの物。なかなか良い万年筆ではありますが、現行品の価格設定は相当強気で、現在の価格に見合うだけの満足感があるかと言われたら疑問符を付けざるを得ないと思います。2019年にはさらに値上げしてきており、ますますお勧め度は下がっていますね。デザインとしてはオシャレで存在感もあるので、サイン用としては良いと思いますが、それ以外ではあまりお勧めはしません。とは言いながら、私が一番欲しい万年筆は、現行レマン コレクションのグランブルー。レマン湖の波をイメージした模様入りで、透明ネイビーブルーのラッカーが美しいのですが、これはキャビア、レマンナイトと共に、レマン コレクションの中でも一番高い奴で、10万越え。私の財力ではそんな物を新品で買えるわけ無いし、中古でもほぼ入荷しないので、宝くじが当たるのを待つしかありません。100万以上当たったら買おうかと思っています。というわけで、良い物ではありますが、価格的にお勧めではありません。もちろん余裕のある方ならば止めはしませんが、私としては国産の上級品を買われた方が、満足できると思います。ただ、国産の万年筆はデザイン性がイマイチなので、こういうのが欲しくなってしまう。そこが国産万年筆に対する不満でもあるわけです。


ECRIDOR(エクリドール) ボールペンはお勧め品
ステンレスニブ、嵌合式キャップ、両用式 ボールペンはノック式

 エクリドールは黄金の筆記具という意味の造語で、元々はカランダッシュの前身である鉛筆製作所の名前です。六角形の断面を持つシリーズで、それはまさに鉛筆の形を表しています。ボールペンやメカニカルペンシルは先端部分が削った鉛筆の形になっており、よりイメージが伝わりやすいでしょう。この六角形の、子供の頃から持ち慣れた形状が、エクリドールの持ちやすさの決め手でしょうね。

 エクリドールの軸は真鍮製で、様々な模様が刻まれており、軸色はゴールドとシルバー。ゴールドタイプは当然金メッキ、シルバータイプは厚さ10μmの銀メッキの上から薄く他の金属をメッキしていますが(中古市場には銀メッキのみだった頃の物もたまに出てきます)、そのコーティングがロジウムの物とパラジウムの物があります。元々は銀メッキだけだったのですが、変色を防ぐためロジウムコートを施し、後により滑りにくいパラジウムコートに変更したようです。写真では判別しにくいのですが、上のボールペンがパラジウムコート、下の万年筆がロジウムコートです。2本並べると、万年筆の方が白っぽく見えます。


        上:カランダッシュ エクリドールコレクション シェブロン シルバープレートパラジウムコート ボールペン
        下:カランダッシュ エクリドールコレクション シェブロン シルバープレートロジウムコート 万年筆 細字

 エクリドールの万年筆はステンレスニブの万年筆としては高価な部類ですし、希望価格で新品を買ったら、これ一本の値段で国産の金ペンエントリーモデル3本セット(パイロット カスタム74、セーラー万年筆 プロムナード、プラチナ萬年筆 #3776センチュリー)が買えてしまうのですから、興味はあっても手を出さずにいたのです。あと、形状的にキャップをペン尻に挿すとテールヘビーになるのは容易に想像できましたし。シェブロンのボールペンとライター(ライターはスイス製ではなく中国製のライセンス生産品)を持っているので、シェブロンの中古が出たら・・という感じで待っていたら、出ました。でも、あえてすぐに買いに行かず、少々待っていました。それは、より値引きするタイミング。それまでに売れてしまったら縁がなかったと諦め、値引きされるのを待つ。これが上手い買い方で、よほど欲しい物が出たというならば話は別ですが、待つことでより安く買えるというテクニックです。ちなみにシェブロンというのは、表面に刻まれているこのような(<<<<<<)柄の名前で、他にもいくつかの柄があり、柄によって価格が違います。シェブロンはかなり古くからある柄で、エクリドールの中では安価です。

 で、このようにして定価の1/3くらいで手に入れた中古品を実際に手にしてみますと、細くて万年筆としては持ちにくそうだったのですが、首軸と胴軸の境目付近を持てば、私にとっては意外と持ちやすいです。予想通りキャップをペン尻に挿すとすごくテールヘビー。なのでこれは、キャップを挿さずに使っています。胴軸の長さは十分にあるので、挿さなくても平気ですね。インクフローは良く、筆記線も割と細め。意外なほど使いやすかったのですが、価格を考えたら新品を買って使うほどの物ではないという感じですね。中古を根気よく待って買って正解でした。ただ、造りは非常にしっかりしており、手の小さな人には合いそうな感じです。ボールペンとお揃いになったので、ペアで持ち歩いて使っています。

 カランダッシュの万年筆にはバリアス、レマン、マディソンUなどの、金ニブを装着した高級ラインもありますが、カランダッシュも高級ブランド。高くてとても手を出せません。

 さて、万年筆好きの私でも、エクリドールのお勧めは何と言ってもボールペン。持ちやすい形状に加え、中に入っているのはかつて世界一の書き味と称されたGOLIATHという替え芯。これはインクフローが抜群でほとんど掠れることが無く、非常に滑らかな書き味。今では国産のジェットストリームとかビクーニャの方が滑らかですが、私は滑らかすぎるのが嫌いなので、GOLIATHの滑り感が限界。私にとってこれ以上滑ったら字が纏まらなくなるという、ギリギリの線上にいるのがこのGOLIATHなのです。そして、エクリドールのボールペンにはもう一つ大きな特徴があります。それは、替え芯が全くと言って良いほどガタつかないこと。芯がぶれないので非常に書きやすいのです。ボールペンとしては高価な物なので誰にでもお勧めというわけではないですが、一本は高級な物を持っていたいという方には、自信を持ってお勧めできます。とは言っても個人により好みの差は歴然としていますから、必ず手にとって試し書きをしてから購入するようにして下さい。細軸が苦手な人には全く合いません。あえて難点を挙げるとすれば、替え芯が出ている部分が短くてペンの先端が見にくいところが挙げられます。あと、エクリドールは大量筆記には必ずしも向いていません。事務用にガンガン使いたいのであれば、次項のオフィスライン849の方がお勧めです。ちなみに私は、エクリドールに入っていた中字の替え芯と、オフィスライン849に入っていた細字の替え芯を入れ替えて使っています。より滑りの良い中字の替え芯を軽いオフィスライン849に入れ、エクリドールは細字にして少しだけ滑り感を抑えているのです。

 エクリドールの替え芯の交換は独特で、ノックボタンを左に回して取り外し、替え芯を新しい物に入れ替えた後、ノックボタンを取り付けるのですが、取り付ける際はノックボタンを押し込みながら右に回します。ちょっとこつが要るのですが、A4ノート600ページくらいは書けますから、頻度はそう高くないと思います。849も同じ方式です。


        エクリドールのノックボタンを外したところ


OFFICELINE 849(オフィスライン849) お勧め品
ノック式ボールペン

 単に849と呼ばれることが多いですが、カランダッシュの公式サイトによると、849、888インフィニットとアルケミクスがオフィスラインとして一つにまとめられています。オフィスで使うための物という位置づけなのでしょうか。確かに849はエクリドールに比べ、大量筆記に向いたシリーズです。ずっとボールペンとペンシルのシリーズでしたが、2017年秋、万年筆が追加されました。試し書き用があったので書いてみましたが、悪くはありません。というか、安っぽさは否めないものの、ニブユニットは非常にしっかりしていて書きやすい万年筆でした。エクリドールを持っているので必要はないかなという感じですが、価格的にはずっと安いですので気軽に使うのには良いかも。

 849はクリップの形状など細かな部分に違いはあれど、エクリドールとよく似た形状です。軸は真鍮ではなくアルミニウムで、エクリドールに比べるとかなり軽いです。そして定番品はラッカー塗装仕上げ。これが重要なポイントで、手に吸い付く感じのあるラッカー塗装は、長時間ペンを持って筆記するのに向いているのです。大切な人に手紙を書いたり、日記をしたためたり、商談相手にサインを求める際に渡すボールペンとしてはエクリドール、デスク上で事務作業をする際に使うボールペンとしては849と、しっかりと棲み分けをしているのだと思います。


        カランダッシュ 849 限定品 アイコン シャイニーブラック ボールペン

 849の替え芯も、エクリドールと同じGOLIATH。ただし、初期に入っているのは黒の細字だったり中字だったり、あるいは青の細字だったりするようです。最近は黒の細字で統一されつつあるようですが、青が入った状態で売られている物もあります。ヨーロッパでは青インクが普通に使われるようなのですが、日本人としては少々困りますね。中に入っている替え芯の色は、チェックしておいた方がよいでしょう。エクリドールと比べてしまうとわずかに芯のガタつきがありますが、一般的なボールペンと比べればむしろガタつきは少ない方で、そんなに気にすることはないと思います。書き味はエクリドールとそんなに変わりませんが、軸が軽い分ペン先が勝手に滑っていく感じはより少なくなります。これも高級品の一つですから事務用品としては高いと思いますが、評判の良いGOLIATHを試したいならば、これから入るのが無難です。なお、エクリドールも849も細軸のボールペンですので、太軸が良ければアルケミクスが候補ですかね。888インフィニットはGOLIATHではありませんが、これも書き味は良いです。