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TWSBI


TWSBI(ツイスビー) 台湾

 三文堂筆業有限公司は台湾新北市に拠点を置くメーカーで、40年以上にわたり様々な有名ブランドの製品をOEM生産し、技術を磨き、経験を積み重ねた末、独自ブランド商品であるTWSBIを販売するに至りました。長年培った樹脂や金属の加工には定評があり、その技術を活かした製品を提供しています。万年筆はハイクオリティかつコストパフォーマンスに優れ、機能的にも面白く、書き味も上々。ステンレスニブにはかなり自信があるようで、金ペンは造らないようです(とは言ってもニブは委託製造でしょうが)。安価な上、書き味はかなり良く、全て吸入式で使い勝手も良い。気軽に万年筆を楽しみたい方や、これから万年筆を使いたいという方に超お薦めのメーカーですが、まだまだ日本での知名度は低く、取り扱っているお店は少ないです。なので、一部の万年筆マニアから注目を集めているという感じですが、代理店が決まってからは取扱店がかなり増えており、初めての万年筆として買い求めていく方も増えているとか。

 なお、ツイスビーの万年筆には分解・メンテナンス用の工具とシリコーンオイル、VACは交換用のパッキンも付属しており、自分で分解掃除をすることもできます。定期的な洗浄であればそこまでする必要はありませんが、インクを変える時などは胴軸内部を完全清掃することができ、便利です。また、交換用のニブユニットも販売されており(ECOなど低額品を除く)、細字を買ったけどスタブを使いたくなったとか、不注意でニブを曲げてしまったとかいう際に、ニブユニットだけを購入して自分で付け替えるということも出来ます。ただしニブユニットにはVAC 700用、ダイヤモンド580用、それ以外用があるみたいですので間違えないこと。


VAC 700 お勧め品
ステンレスニブ、ネジ式キャップ、プランジャー吸入式

 吸入式の万年筆は数あれど、今ではあまり見ることのないプランジャー吸入式。先ず尻軸を緩め、次に尻軸の尾栓をゆっくりと一杯に引きます。そしてボトルインクに首軸の先端までを漬け、尾栓を勢いよく押し込むと、インクを吸入します。押し込む際に空気を押し出し、内部の圧力が下がりますが、最後まで押し込むとその部分の胴軸内部が太くなっているため、圧力が解放され、インクを吸い込むのです。押しているのにインクを吸い込むという、ちょっと不思議な機構ですね。プランジャー吸入式は大量のインクが吸入できる方式で、有名なのがパイロットのカスタム823(公称吸入量1.5ml)ですが、VAC 700はおよそ1.8mlものインクを吸入することができます。下の写真は普通のボトルから吸入した直後で、大体胴軸の半分くらいにインクが入りますが、VAC専用のインクボトル(ボトルのネジ山部分にキャップを外した万年筆を接合できる)を使用したら、何と胴軸内ほぼ一杯にインクが吸入できました。恐らく3ml以上は入っているでしょう。大量筆記する方には嬉しい仕様ですし、透明軸の物は内部が見えて面白いという特徴もあります。カスタム823は14K15号ニブを装着した、パイロットの中でもなかなかに高級な品ですが、ツイスビーのVAC 700はステンレスニブで、税抜き価格は1万円ちょっとですから、手軽に面白吸入方式を楽しみたい方にもお勧めです。


        ツイスビー VAC 700 クリア 万年筆 極細字

 ステンレスニブとしては大きなサイズで、モンテベルデのニブと同じくらいあります。このニブは筆圧を掛けてもあまりしなりませんが、書き味は軽やかで滑らか。なかなかの実力です。私は極細を購入しましたが、これがまた素晴らしい。字幅は国産の細字程度で、なおかつカリカリした感触があまりない(もちろん多少はありますが)。国産品と比べても引けを取らないどころか、これだけの書き味のステンレスペンはなかなか無いと思います。台湾も漢字文化圏ですから、日本人にとっても書きやすい万年筆です。VAC 700はかなり大柄の万年筆で、人によっては大きすぎたり重すぎたりするかもしれませんが、同じ吸入機構を採用したVAC miniがありますので、持ち比べて選ぶと良いと思います。miniはニブが小さく、書き味も異なりますが、手の小さな方にはVAC miniの方が良いかもしれませんね。なお、プランジャー式のVACは、筆記する際に尻軸を緩めないとインクが供給されません。プランジャーの部分がインク止めの役割をしているからです。これだけ大量のインクを吸える万年筆には必要な機能みたいですね。少し書くだけであれば緩めなくても首軸に残っているインクだけで書けますが、しばらく書き続ける場合は尻軸を緩めて下さい。もちろん使い終わったらちゃんと尻軸を締めることをお忘れ無く。面倒くさい仕様ですが、パイロットのカスタム823も同じ仕様で、こういう面倒くささまもまた、万年筆の面白さでもあるのです。

 取り扱っているお店が少ないのはネックですが、東京では表参道のブングボックスというお店(本店は浜松市)で扱っています。私もそこで購入しました。関西ではナガサワ文具センターで取り扱っているようです。長年有名ブランド品をOEM生産していただけに、品質も確かだと思います。軸とキャップは透明樹脂で、結構肉厚でしっかりしています。尻軸と首軸が黒で、スケルトン感はやや薄れますが、アクセントになって良いかもしれません。そこはもう好みの問題ですね。金属部品はクロムメッキか何かですが、クリップだけ何故か鏡面仕上げでなくザラザラになっています。ここも鏡面仕上げで良いような気はしますが、使用上は問題ないのでこれもアクセントになっているのかな? VAC 700はキャップを挿さなくても十分に使えます、というか、キャップがあまり深く入らず、すごく長くなってしまうので、挿さない方が良さそうですね。一方VAC miniは挿さないと短すぎるでしょう。ペン種は極細、細字、中字、太字、スタブ1.1があり、VAC 700にはスタブ1.5もあります。スタブとは縦線が太く横線が細いニブで、数字は縦線の太さ(mm)です。


DIAMOND mini(ダイヤモンド ミニ) お勧め品
ステンレスニブ、ネジ式キャップ、ピストン吸入式

 ダイヤモンドはピストン吸入式の万年筆で、胴軸がクリスタルカットされており、表面がキラキラ輝くように工夫されています。ダイヤモンドという品名はそういう事なのでしょうね。透明軸なのに高級感のある演出をしており、チープな感じもなく、なかなか良い出来だと思います。ダイヤモンドにはダイヤモンド580とダイヤモンド ミニがあり、軸の長さが違うだけでなく、ニブの形状も異なります(長さはほぼ変わらないが、mini用は巻きが強くパッと見て細い)。VAC 700やエコが割と大柄の万年筆なので、これは小さい方を選択しました。また、どちらのサイズにもALという、首軸が金属(アルミニウム)でできた物が用意されており、樹脂製の物よりも2〜3gほど重くなっています。軸色は無色ですが、キャップ、首軸、尻軸などにアクセントカラーを付けたものもあり、なかなかバリエーションもあります。


        ツイスビー ダイヤモンド ミニ ALブルー 万年筆 細字

 ミニタイプには、尻軸側にもキャップを装着するためのネジ山が切ってあり、キャップをねじ込んで使用します。このミニALの尻にキャップを装着した状態がなかなかバランス良く、ニブはVAC 700に比べたら小さいですが、書き味も上々で、国産のステンレスペンにも全く引けを取らないですし、使い勝手も実に良い。見た目も素敵なので、ツイスビーでも一番のお勧めはダイヤモンドシリーズかな。もちろんVACの面白ギミックや、ECOの価格も大いに魅力ですけどね。ペン種は極細、細字、中字、太字、スタブ1.1があり、ダイヤモンド580にはスタブ1.5もあります。ダイヤモンド580はキャップをペン尻に挿そうとしても、尻軸の半分くらいしか入らず、すごく長くなりますので、元々挿す仕様ではないのでしょうね。

 ダイヤモンドシリーズにも専用のインクボトルがあり、ボトルは胴軸と同じようにクリスタルカットされています。そして実にユニークなことに、ニブユニットを外して胴の部分をインクボトルに装着し、胴軸内部にインクを直接吸入するという、なかなか面白い方式です(もちろんペン先をインクに漬けるという通常の吸入方法もできますので専用ボトルが無くても大丈夫です)。また、この構造から、首軸とペン先が簡単に交換できるので、交換用のニブも販売しています(580用、mini用ともにあるようです)。細字を買ったけど中字の方が良かったとか、普段は細字でも時々スタブが使いたいとかいう場合は交換ニブだけを購入すると良いでしょう。とにかく好きなように使い倒せる万年筆だと思います。ツイスビー、恐るべし。


CLASSIC(クラシック)
ステンレスニブ、ネジ式キャップ、ピストン吸入式

 透明軸がずらっと並んでいるツイスビーの万年筆の中にあって、少々異色の存在がこれ。これも吸入式ですが軸は不透明で、首軸と胴軸の接合部分のみ透明になっており、この窓からインクの残量を確認するという、一般的なピストン吸入式と同じ機能を持っています。ニブはダイヤモンドminiやエコと大きく変わらないみたいです。なので書き味もそんなには変わらないです。


        ツイスビー クラシック ブルー 万年筆 細字

 この万年筆の特徴は、軸が面取りされた四角形だということ。この形状がなかなか持ちやすいですし、商談とかで使う際にも透明軸よりはこちらの方が良さそう。ということで、これにはオーソドックスなブルーブラック系のインクを入れて使っています。これもそれなりに見栄えは良いので、仕事とプライベートの両用で重宝しそうです。

 クラシックもダイヤモンドと同じ仕様で、首軸を外し、専用ボトルから胴軸に直接インクを吸入できるみたいです。


ECO(エコ) お勧め品
ステンレスニブ、ネジ式キャップ、ピストン吸入式

 5,000円でお釣りの来る万年筆は数あれど、5,000円でお釣りの来る吸入式万年筆は珍しい。ピストン吸入式ですが、この方式で割とリーズナブルなペリカンのM200でも10,000円は超えるので、これが如何に安いかお分かりでしょう。もちろんM200に比べたら安っぽさはありますが、機能的には十分です。
注:かつては4,500円(税抜き)ほどで提供されていましたが、正式に代理店が決まって以降は5,000円(税抜き)となり、現在税込み5,500円となっています。

 VAC 700と比べれば小さいですが、それでもパーカー デュオフォールド インターナショナルくらいのサイズ感はあります(ただしニブははるかに小さいし、そもそも高級感は全然違います)。かなり大きめの万年筆ですね。そしてキャップをペン尻に挿してもあまり深く刺さらず、かなり長くなり、テールヘビーになります。胴軸を持つならばそれでも良いのですが、首軸を持つならば、キャップは挿さない方が書きやすいでしょう。胴軸の長さは十分にあります。ペン種は極細、細字、中字、太字、スタブ1.1があり、これだけ安い商品なのに選択肢が多いところもこの商品の魅力です。


        ツイスビー エコ ブラック 万年筆 細字

 VAC 700よりもニブが小さく、感触はより硬いのですが、書き味は滑らか。国産の同価格帯のステンレスニブにも全く引けを取りません。安くて書き味が良くてインクもかなりの量を吸入でき、ペン種も割と多く揃っている。ある意味では最強の万年筆かもしれません。これは超お勧めです。ただ、時々ニブが抜けてくるという不具合があるみたいです(実はこの個体もそうだったのですが、ニブを強目に押し込んだら直りました)。この万年筆はニブの字幅刻印(EF,Fなど)がほとんど首軸に隠れた状態が正解で、この刻印が首軸の外に出ている場合はニブが抜けかけている状態です。この状態になったらニブを真っ直ぐに押し込むと直りますが、自信がない方は購入店にご相談下さい。これがこの万年筆唯一と言ってもよい弱点です。

 胴軸と首軸は全て透明樹脂で、キャップと尻軸まで無色透明の物と、キャップと首軸が不透明の着色タイプ、透明の着色タイプなど、様々な色が続々と出てきています。それがまた可愛かったり綺麗だったりするので、また欲しくなるという、上手い売り方をしています。欲を言えばせっかくのスケルトン万年筆なのですから、胴軸まで透明ブルーとか透明グリーンなど、カラフルな軸を造っても良いと思いますが、コストパフォーマンスの高い万年筆ですから、見かけたら手に取ってみると良いと思います。ツイスビーの取扱店は増えていますし、エコは取扱店なら大抵は置いてありますので、興味のある方はご覧になって下さい。