U-Maの音楽館

万年筆のインク選び


 インクは原則として万年筆と同じメーカーの物を入れます。他メーカーのインクを入れて使うと、保証の対象外となることがあります。以上・・・では話になりませんね。それはあくまでも建前で、よほど相性の悪いインクでない限り、他メーカーのインクを入れても、万年筆が故障してしまうリスクは低いようです。ただし、インク売り場に置いてあるパイロットの証券用、製図用のインクは、万年筆に入れてはいけません。これらは付けペンまたは筆で使うインクで、万年筆に入れるとすぐに詰まって故障の原因となります。エルバンの金粉入りインクのような特殊な物も、避けておいた方が良いでしょう。

 上記のような特殊なインクはともかく、万年筆にはそのメーカー以外のインクは入れてはいけないと主張する方々がいる一方で、基本的には好きなインクを使って良いと主張する方々もいます。ちなみに私は後者です。純正インク派の根拠は、純正インクを使用しないと保証が受けられない場合があるという点。そしてもう一つが、「悪魔のインク」の存在です。有名なのがパーカーが1990年代の中頃に発売したペンマンというインクですが、パーカー以外の万年筆に入れると、樹脂が溶けたり割れたりする現象が起き、数年で販売を停止したというインクです(その後中身を変更して再発売したようですが)。樹脂が溶けたり割れたりするのは、何らかの有機溶剤を配合していたか、若しくは界面活性剤の種類や配合量が問題だったのか。確かに界面活性剤の一部はスチレン系の樹脂を劣化させるなどの反応を起こすので、そういう可能性は否定できません。しかし、その件は万年筆メーカー、インクメーカーならもう分かっているでしょうから、インクの調合はより慎重になっていることでしょう。なのでよほど特別な樹脂を使った製品でない限り、基本的には他メーカーのインクを入れても大丈夫だと思います。パイロットの色彩雫シリーズなどは、他メーカーの製品にもインクを入れてみて、問題がないことを確かめているようですし、心配ならば同じメーカーのインクを使えばよいわけです。そもそも他社のインクを入れてはいけないなら、エルバン、ダイアミン、ローラー&クライナーなどのインクメーカーは困ってしまいます。

 さて、万年筆のインクは全て水性インクですが、タイプとしては以下の3つに別れます。

  1:水性染料インク
  2:水性顔料インク
  3:没食子インク

染料は水、油、有機溶剤などの溶剤に溶かして使う色素、顔料は水、油、有機溶剤などの分散媒に分散させて使う色素を指します(万年筆用インクの場合は溶剤も分散媒も水です)。では溶かすのと分散するのとはどう違うのか。どちらも色素を溶剤や分散媒に均質に混ぜて使うのには変わりないのですが、染料は溶剤の中で、分子やイオンのレベルにまでバラバラになって存在するのに対し、顔料は顔料分子の微細な集合体が、分散媒中に均質に存在します。染料は分子の状態までばらけているので、その大きさは大きな分子でも1〜2nm程度ですが、顔料は10nm〜数十nm程度の粒子として存在します。別の言い方をすると、染料は溶けているけど顔料は溶けているのではなく粒子が浮かんでいるということです。

 染料インクは発色が鮮やかで、多彩な色のインクを作れますが、そもそもは水に溶ける物質ですから、紙に書いてしっかり乾かしても、水に浸せば溶け出してしまいます。また、一般には光にあまり強くありません。一方顔料インクは発色がそれほど鮮やかでなく、くすんだ色の物が多いのですが、しっかり乾かすと顔料の粒子同士が固着し、紙に絡みつくため、水に浸しても容易には再分散しません。詰まりを防止するため、わざと耐水性を落としたものが多いのですが、それでも染料インクに比べ耐水性が高く、耐光性は極めて高いです。ただし、耐水性が高いのは、反面困った性質でもあるのです。それは万年筆の中で万が一詰まってしまうと厄介であること。染料インクは根気よく水洗いすれば大方落ちますが、顔料インクは再分散が困難で、最悪の場合分解掃除が必要になります。

 没食子インクは硫酸第一鉄などの二価鉄化合物と没食子酸、タンニン酸を水に溶かし、水性染料を添加した物です。水性染料は、硫酸第一鉄と没食子酸、タンニン酸を混ぜても特に色は付かないため、筆記線を確認できるようにするために添加しているだけです。このインクは筆記した後で鉄が二価から三価に空気酸化され、没食子酸、タンニン酸と反応して黒い沈澱を生ずることを利用しています。紙に染みこんだ後に沈澱しますから、水に浸すと染料は流れてしまっても、黒っぽい色がしっかり残ります。また、この発色は三価の鉄イオンがキレートされて発色しているため、光にも割と強いのが特徴です。ただし、ペンの中でわずかながら酸化反応が進むとペンを詰まらせることがありますし、酸性インクですから腐食性があります。昔は現在のような優れた染料があまりなく、顔料を微粒子化して安定に分散させることも難しかったため、没食子インクが使われたのです。基本的には青い染料が使われ、筆記直後は青く、徐々に黒ずんでくることからブルーブラックインクと呼ばれました。今では暗い青色のインクを指しますが、本来はこういう意味なのです。今となっては没食子インクである必然性は低いのですが、味わいがあるため愛好者も多いです。なお、没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸)とは、樹木の虫瘤を煮詰めて得られる物質で、タンニン酸はこの没食子酸が複雑に結合した物質です。

 基本的に最も無難なのは染料インクです。公文書や保存書類の筆記にはあまり向きませんが、メンテナンス性は最も良く、様々な色が出ているので選択肢も広いです。

 顔料インクは特に耐水性・耐光性を要求される用途に向いていますが、できる限り万年筆と同じメーカーのインクを入れるようにしてください。インク乾燥防止機能の付いた万年筆や、比較的乾きにくいネジ式キャップの物に入れると良いでしょう。そして、メンテナンスはしっかりしてください。

 没食子インクも定期的に洗浄するなど、メンテナンスは必要です。また、酸に弱い素材(アルミニウムなど)を首軸などに使っている万年筆は、避けてください。没食子インクは金ニブの万年筆に入れることを推奨しますが、プラチナ萬年筆のプレピーに同社のブルーブラックインクを付けて普通に売っているくらいですから、同じメーカーの物であればステンレスペンでも平気です。没食子インクには硫酸系と塩酸系があるようですが、ステンレスは塩酸に弱いので、むやみに他社の没食子インクを入れるのは避けた方が良さそうです。洗浄する際には水にビタミンC(L-アスコルビン酸)を入れると、綺麗に洗浄できるようです。多分ビタミンCが三価鉄を二価鉄に還元して溶かし出すのでしょうね。

 カートリッジインクを使用する場合は、原則として同じメーカーのインクを使うことになりますが、ヨーロッパサイズという共通サイズのカートリッジを採用しているメーカー間では、他メーカーのインクを使うこともできます。ただしヨーロッパサイズにはロングとショートがあり、ロングが入らない万年筆も多いので注意してください。あと、ヨーロッパサイズでも微妙にサイズや接合部が異なる場合があるようで、完全互換とはいかないようです。ヨーロッパサイズを採用しているメーカーを以下に挙げます(全部ではないかもしれません)。赤文字は国際標準規格を採用しているメーカーで(これも全部ではないかもしれません)、これらメーカーのショートタイプであれば、恐らく完全互換があるでしょう。

  ドイツ:ペリカン、モンブラン、カヴェコ、ロットリング、ファーバーカステル
  フランス:ウォーターマン、エルバン、カルティエ、S.T.デュポン
  スイス:カランダッシュ
  イタリア:アウロラ、モンテグラッパ、ヴィスコンティ、デルタ
  U.K.:コンウェイスチュアート、ヤード・オ・レッド
  アメリカ:モンテベルデ
  日本:オート

 ちなみに私はウォーターマンのロングカートリッジをカランダッシュとビスコンティに、ショートカートリッジをモンテベルデに入れていますが、特に不都合はありません。


インクの色

 インクには様々な色が揃っており、英国のインクメーカー・ダイアミンは、何と百種類もの色を出しています。カートリッジインクはブラック、ブルーブラック、ブルーの基本三色だけというメーカーも多いですが、ボトルインクは多くの色が揃っていることが多いです。そんなに沢山の色がある中で、やはり無難なのはブラックでしょうか。何にでも使えますからね。日本ではブルーブラックが最も人気のある色です。これは万年筆インクの歴史と関係があり、公文書などは耐光性、耐水性のある没食子ブルーブラックを多用していた名残なのでしょう。もちろんブラックよりも味わいのある色調が好まれるというのもあるでしょう。一方欧米ではブルーを常用する人もかなり多いみたいです。基本的にビジネスや信書に使用するならこの基本三色の範囲内が無難ですが、明るすぎるブルーは控えた方が良いかもしれません。万年筆を一本だけ使うという方は、そのメーカーのブラックかブルーブラックが無難な選択になるでしょう。なお、ペリカンのブルーブラックなど、青が弱めで渋い色のブルーブラックインクは、紙によっては薄墨のように見えてしまうため、信書に使用する場合は紙との相性も確かめた方が良いと思います。

 基本三色以外で使用頻度が多いのは赤でしょうか、私も仕事で文書の添削などに赤インクを使います。

 その他の色はほぼ趣味の世界と見て良いでしょう。プレピーにターコイズとか緑を入れてラインマーカー的に使ってはいますが、文書を書くのは個人的なものにしておいた方がよいでしょう。

 ちなみに多くの万年筆売り場では、試し書き用にブルーインクを使います。基本カラーの中ではブルーが一番洗浄しやすいからだというのがその理由らしいです。中でもペリカンのロイヤルブルーは多くのお店で使われています。


インクの耐光性テスト

 下の画像は様々なインクで字を書き、日の当たる窓に貼り付けて、3ヶ月間日光に曝したものを、一月ごとに撮ったものです。インクによって耐光性がまちまちなのが分かると思います。特に優秀なのが右上の3つ、セーラー万年筆の極黒、青墨、ストーリア ファイアーですが、これらは顔料インクです。冬場とはいえ、3ヶ月曝してもびくともしません。各社ブラックはどれも耐光性良好で、没食子ブルーブラックも黒い色ははっきり残ります。意外と良かったのがパイロットの色彩雫シリーズですね。あっ、これが私の字です。一応読めますよね。




インクと万年筆の相性

 万年筆のインクの流れ方はそれぞれ個性があります。メーカーでは万年筆を設計する際、自社のインクを使ってインクの流れを調整するので、万年筆はメーカーによってインクの流れやすさはまちまちです。メーカーAの万年筆はインクフロー(流れやすさ)が良く、インクはとろりとしてやや流れにくい。メーカーBの万年筆はインクフローが渋めで、インクはサラサラで流れやすい。さて、メーカーAの万年筆にメーカーBのインクを入れたらどうなるか。インクフロー過剰で字幅は太くなり、インクも乾きにくくなります。反対にメーカーBの万年筆にメーカーAのインクを入れると、フローが渋すぎてインクが上手く供給されず、頻繁に掠れたりすることになるでしょう。

 万年筆とインクにはこういう相性があることは知っておいた方がよいでしょう。パーカーやペリカンはフローが良い万年筆でインクは渋め、ウォーターマンの万年筆はフローが渋めでインクはサラサラでフローしやすいようです。セーラー万年筆は全体にフローを絞ってシャープな筆記線を出していますが、パイロットの万年筆はフローが割と良い上にインクもサラサラでフローが良く、その代わりにペンポイントを精度良く小さく研ぎ澄ますことで字幅を調整しているようです。メーカーによって方向性はまちまちなので、このメーカーの万年筆とこのメーカーのインクは組み合わせない方がよい・・という組み合わせもあるのです。

 インクが潤沢に出ると潤滑性が高まるため、書き味は滑らかになり、タッチも柔らかく感じられますが、筆記線は太めに出ます。また、紙質によってはインクが滲みやすかったり、裏抜け(紙の裏側までインクが浸透してしまうこと)が起こりやすくなります。一方インクの出が渋いと潤滑性が低くなり、摩擦感が出たりタッチが硬く感じられたりしますが、筆記線は細めでシャープな輪郭となります。それ以上にインクの出が渋くなると字が掠れたりします。万年筆は正常な状態でしっかり洗浄しているにもかかわらず、字が掠れてしまうのであれば、インクが合っていない可能性が高いと言えるでしょう。

 私が最もフローが良いと思っているのはパイロットのインクです。万年筆と同じメーカーのインクを使っても少々フローが渋い場合、パイロットのインクを入れるとフローが改善し、すらすらと書けるようになったりします。もしフローの渋い万年筆が手元にあれば、一度洗浄し、パイロットのインクを入れてみて、それでもフローが渋いのであれば分解洗浄、調整、修理等が必要だと思われます。


カートリッジインクやコンバーターの抜き差し
 シェーファーのカートリッジのように特殊な差し方をする物もありますが(通常の差し方でも問題はない)、多くは首軸を持ってカートリッジインクを正しい向きに真っ直ぐ差し込んで使用します。抜く時は真っ直ぐに引き抜きます。プラチナ萬年筆など、抜く際には回しながら抜くよう説明書に書いている場合もありますが、基本的には真っ直ぐに抜きます。メーカーによって簡単に抜ける場合と硬くてなかなか抜けない場合がありますが、勢い良く引き抜かず、ゆっくりと抜くようにして下さい。差す時も、回しながら差すと、接合が甘くなり、インク漏れをしたりします。特にパイロットの万年筆は、回しながら抜き差しすると、首軸内部の構造が折れてしまうことが希にあるようです。

 コンバーターはそんなに抜き差しする必要のない物ですが、洗浄のため抜き差しする場合は、カートリッジ同様、基本的には真っ直ぐ抜き差しして下さい。ただし、ヨーロッパタイプの万年筆には、コンバーターをねじ込んで使用するものも多いので、その場合は回しながら抜き差しして下さい。


インクのレビュー

パイロット ブラック
 なかなかはっきりした黒です。インクフローは良いですが、若干乾きにくく、紙によっては裏抜けを起こします。しかし割と使いやすいインクではないでしょうか。耐光性は良好です。ボトルとカートリッジでの販売です。

セーラー万年筆 極黒
 顔料インクで、極黒というほど真っ黒ではな気がしますが、滲みや裏抜けはほとんど無く、耐光性は抜群。半年くらい日光に曝してもびくともしません。一度乾いてしまえば水にも強く、保存性は非常に良いです。ただし、万年筆のメンテナンスはしっかりして下さい。ボトルとカートリッジでの販売です。

パーカー ブラック
 これもなかなかしっかりした黒で、良い色です。パーカーのインクですから若干とろりとしており、乾きが早く滲みにくいです。しかしフローの渋い万年筆に入れたらインク切れを起こすかも。それを考慮してパーカーの万年筆にしか使っていません。耐光性は良好です。ボトルとカートリッジ、ミニカートリッジでの販売です。

ウォーターマン ブラック
 ウォーターマンのブラックインクは真っ黒ではなく濃いグレーという感じです。インクフローも良さそうで、なかなか渋い味わいがあります。どんな万年筆にも無難に合いそうなインクですね。ボトルとカートリッジ(ショート&ロング)での販売です。

パイロット ブルーブラック
 染料系のブルーブラックで、しっかりとした青味もあり、ブルーブラックの中では鮮やかな色です。ただ、耐光性はあまり良くありません。ボトルとカートリッジでの販売です。

パイロット 色彩雫 月夜
 パイロットの人気シリーズ「色彩雫」の中でも一番人気の色。染料系で、一応ブルーブラックの類ではありますがかなり緑がかっており、なかなか個性的な色です。耐光性も十分ですが、光に曝すほど暗い色が抜けてきれいな青緑色が残ります。色彩雫シリーズは50mlボトルと15mlボトルがありますが、15mlボトルは三本セットで販売するよう、店舗に要請しているようです。シリーズ全般にフローは良いと思います。

パイロット 色彩雫 深海
 染料系ブルーブラックですが、グレーに少し青が入った感じの渋い色です。月夜が人気ですが、個人的にはこちらの方がブルーブラックらしくて好きですし、公文書以外ならどんな用途にも使えそうです。耐光性は月夜ほどではないですが、3ヶ月日光に曝しても紫っぽい色が残り、文字はちゃんと読めます。これが我が家の主力インクで、入れている万年筆の本数が一番多いです。

セーラー万年筆 ブルーブラック
 濃くて鈍い青色の、かなり渋い染料系ブルーブラック。これも公文書以外ならどんな用途にも無難に使えるでしょう。耐光性は普通です。ボトルとカートリッジでの販売です。

セーラー万年筆 青墨
 これをブルーブラックに入れて良いのかという気もしますが、鮮やかな青ではないので一応ここに入れておきます。鈍い青色の顔料インクで、色の好みは分かれそうですが、耐光性は文句なし、耐水性もかなりのものです。個人的には好きな色なので、メンテナンスをしっかりしながら使っています。ボトルとカートリッジでの販売です。

プラチナ萬年筆 ブルーブラック
 昔ながらの没食子ブルーブラックで、確かに日光に長く曝すと青は抜けますが、黒ははっきりと残ります。しっかり乾かした後であれば、水にさらしても黒がちゃんと残ります。ブルーブラックとしては青味が強く、あまり黒ずんでこない印象です。プラチナ萬年筆は、新品の万年筆に添付するインクはブルーブラックを標準としているようです。ボトルとカートリッジでの販売です。プラチナ萬年筆の製品にしか入れていないので普通にフローしますが、没食子インクなのでフローは渋めだと思います。

ペリカン ブルーブラック
 いかにもブルーブラックという王道の色でしょうか。落ち着いた渋い色合いが好きです。近年リニューアルして没食子インクではなくなったという説と、今でも没食子インクだという説が入り乱れていますが、今でも鉄イオンは含まれているようですし、ある程度の耐水性があり、日光に曝しても黒がしっかり残るので、没食子インクの可能性もあります。一応それを前提に、これを入れた万年筆は定期的に洗浄しています。どうやら鉄イオンの量をだいぶ減らしたタイプに変えているようで、きっぱりと没食子インクだとは言えないものになっているようです。ボトルとカートリッジ(ショート&ロング)での販売です。インクフローは結構渋いです。

ウォーターマン ミステリアスブルー
 ブルーブラック系のインクでは、最も万年筆に優しいともいわれるインク。確かに万年筆を洗浄した際、このインクは割とすぐに落ちますね。染料系のやや緑がかったブルーブラックで、紙質によってははっきりと緑色が出てくるという、不思議なインクで、ミステリアスの名はここからきているのかも。光りに曝すと青は割とすぐに抜けますが、後に残ったグレーはそこそこしぶといです。ボトルとカートリッジ(ショート&ロング)での販売です。

パーカー ブルーブラック
 書いた瞬間は王道のブルーブラックですが、これも紙質によっては緑がかってくるインクです。染料系で耐光性は普通。ブラックと同じでとろみがあり、インクフローの良い万年筆ならばよいのですが、渋い万年筆に入れるとまともにフローしないかも。ボトルとカートリッジ、ミニカートリッジでの販売です。

ローラー&クライナー サリックス
 ローラー&クライナーはドイツ・ライプツィヒにあるインクメーカー。サリックスは没食子ブルーブラックで、青色は割と鮮やかに出ますが、時間が経つとやや落ち着いてきます。没食子インクらしく、光りに曝すと青は割とすぐに抜けますが、黒はしっかり読める程度に残ります。私の好きなインクの一つですが、取り扱っているお店は少ないですね。ボトルのみの販売です。没食子インクなのでフローは渋いです。

BUNGUBOX オリジナルインク 4B
 BUNGUBOXは浜松の万年筆専門店で、オリジナル万年筆とオリジナルインクに力を入れていますが、その2号店が東京表参道に誕生したので、時々通っています。4BはBungu Box Blue BlackでBが4つ並ぶことから付けられたとか。セーラー万年筆のブルーブラックにやや似ていますが、よりくっきりした色で、どんなシーンでも使える渋い色のインクです。他にも様々な名前のインクが揃っており、それがまたイメージによく合っています。ボトルのみの販売です。浜松近郊にお住まいの方や、東京近郊にお住まいの方で、興味のある方は一度行ってみると良いかも。なお、浜松店は水曜定休ですが、表参道店は営業日をウェブサイトでご確認を。

パイロット 色彩雫 朝顔
 なかなか発色の良い染料系の青色で、綺麗な色です。しかも染料系なのに耐光性はかなり良く、3ヶ月間日光に曝しても色合いはほとんど変わらず、全体的にやや薄くなる感じです。染料系の青インクがこんなに強いとは意外ですが、それだけ色素が多めに配合されているのかもしれませんね。好きな色なので主力インクの一つとして使っています。

モンテベルデ ブルー
 パイロットの朝顔に似た感じの色で、モンテベルデの万年筆に入れて使っています。ただ、どういうわけか乾きがとても遅いです。決して裏抜けするわけではなく、紙の表面に留まりながらいつまでも乾かないという何とも不思議な感じです。耐光性はあまり良くありません。色は好きですが、取り扱っているお店も少ないですし、わざわざ探してまで使う物でもなさそうです。本国ではボトルとショートカートリッジがあるようですが、代理店のサイトには新しく出たミニボトルシリーズしか載っていないので、輸入は中止した?

アウロラ ブルー
 これは青インクの中でもイチ押しのインクです。色はやや紫がかった濃い青で、華やかさもありながら、紫が主張しすぎずしっとりと落ち着いた感じもする、実に魅力的な色です。ボトルインクの置き場所がもう無く、カートリッジで今のところアウロラのイプシロン ラッカーにのみ入れていますが、色はすごく好みなのでこの万年筆を手にすることも多いです。まあ、アウロラの万年筆を購入したならば、このインクは選択肢として有力でしょう。フローも割と良さそうなので、ボトルなら他社の万年筆にも無難に使えそうです。ボトルとロングサイズカートリッジの販売です。

ペリカン ターコイズ
 やや緑がかった水色の、美しいインク。このインクを購入する前、自分で青色1号、赤色2号、黄色4号を調合して水色のインクを作ったのですが(赤と黄色を混ぜているのは、色の三原色を混ぜて黒を作り、発色を強くするため)、フローが安定せず、似た色のインクを探してこれにたどり着きました。耐光性試験はこれも意外な結果に。1月で水色が抜け、濃い青紫色に変色。3ヶ月経つとわずかなグレーが残るのみ。恐らく水色が先に抜けて、色の濃い部分が残ったのでしょうね。水色なので個人的な用途に限られますが、好きな色のインクです。ボトルとロングサイズカートリッジでの販売です。

BUNGUBOX オリジナルインク ノルウェーの森
 BUNGUBOXオリジナルインクが揃っている中で、真っ先に気に入ったのがこれ。ノルウェーの森というだけに深い緑色で、青にも黄色にも寄らず、これぞ緑色と言える緑色です。エメラルドと言っても良さそうですが、この色合いはノルウェーの森の方が合うでしょうね。名前の由来は某氏の小説ではなく、ビートルズのNorwegian Woodだそうです。

パイロット 色彩雫 松露
 松の葉に降りた朝露のイメージでしょうか。やや鈍い青緑色ですが、書いた瞬間はむしろ青が強く、乾くと緑が強くなる感じです。個性的な色で、好みは分かれそうですね。耐光性は良好です。

パイロット 色彩雫 孔雀
 書いた瞬間は結構明るい青緑色ですが、乾くと落ち着いてきます。松露よりは少し明るく、青に寄った感じです。書いた瞬間はこちらの方が好きですが、乾いた後は微妙。いずれはどちらか一方に絞るかも。耐光性は良好ですが、光りに曝すほど明るくなっていくという感じです。

パイロット 色彩雫 紅葉
 これは好きですね。わずかに紫がかった濃い赤色で、会社で赤を入れる時にも使いますし、プライベートでも割とよく使います。赤インクは発色が弱いのが多い中、これはきっちりと発色しますし、色合いも大好きですね。色彩雫シリーズの中では、耐光性の弱い部類ですが、それでも染料系の赤インクではかなり強い方ではないかと思います。

セーラー万年筆 ストーリア ファイアー
 顔料赤インクで、やや鈍い赤色。裏抜けも滲みもなく顔料インクらしいですが、顔料インクとしてはやや乾きにくい部類かも。耐光性はもちろん抜群で、耐水性も十分。色彩雫 紅葉と共に、会社で赤入れに使ってます。あと、極黒、青墨とともに、会社でやっている日光暴露試験のラベル書きにも使っています。日光暴露のラベルはボールペンで書いても一月くらい経つと読みづらくなりますが、顔料インクなら1年経っても平気ですからね。ただ、プライベートではあまり使いません。さすがに顔料の赤となると良いペンには入れづらいですからね。30mlと20mlのボトル販売ですが、個人的にはリザーバー無しの20mlボトルの方が使いやすいかな。

パイロット 色彩雫 紫式部
 書いた直後ははっきりした紫色で、紙によっては時間が経つとやや淡い色になります。紫式部の実の色を表しているのでしょうか。割と近い色を出していると思います。この系統の色では山葡萄が人気ですが、私はこちらの方が好みです。耐光性は染料系としては良い方です。

プラチナ萬年筆 バイオレット
 プレピー用の2本入りカートリッジのみの販売です。なかなか綺麗な紫色で、発色も良好。ただし、耐光性はあまり良くありません。

パイロット 色彩雫 夕焼け
 色彩雫シリーズでも、個人的にはこれが一番名前のイメージに近いと思っています。オレンジ系ですがオレンジでもミカンでもなく夕焼け。どことなくノスタルジックな渋いオレンジです。この手の色の中では発色も良いです。さすがに仕事では使えませんが、プライベートでは結構好んで使うインクです。意外にも耐光性は上々で、この色がここまで光に強いとは思いませんでした。

BUNGUBOX オリジナルインク ゑびす
 書いた直後は緑がかった明るいブラウンという感じなのですが、乾くと金色っぽくなります。そもそも金色のインクを作りたくてチャレンジしたようですが、だいぶ苦労されたのではないかと思います。でもそれっぽくは見えるので、なかなか良くできたインクだと思います。七福神のゑびすの名を冠しており、幸せを呼ぶインク・・であれば嬉しいですね。ボトルのみの販売です

BUNGUBOX オリジナルインク Sweet Potato Yellow Omaezaki
 これはややオレンジがかった黄色のインクで、黄色としては発色が強い方です。サツマイモの実の色を表現したインクで、皮の色を表現したSweet Potato Purple Omaezakiと対になっています。赤に寄らない黄色のソレイユがとても良い色でしたがしばらく欠品。ということでこちらにしたのですが、これもなかなか良い色で気に入っています。

プラチナ萬年筆 古典インク カシスブラック
 古典インクは2017年に発売された、プラチナ萬年筆の意欲作。名前の通り昔ながらのタンニン酸インク(没食子インクと同様)で、しかも同社のブルーブラックよりも書いた後の変色がはっきりしていますから、古典インクの楽しさが味わえます。カシスブラックは書いた直後は薄い朱色ですが、書いてしばらく経つと、濃いカシス色に変化し、ここまで変色した後は、水にさらしても黒がしっかり残ります。耐光性は試していませんが、恐らく黒がしっかり残るでしょう。色むらが起こりやすいインクですが、それもまたこのインクの個性と言えるでしょう。面白いインクだと思います。ボトルのみの販売です。プラチナ萬年筆の製品にしか入れていないので普通にフローしますが、没食子インクなのでフローは渋めだと思います。

プラチナ萬年筆 ピンク
 プレピーの売り場に置いてある2本入りカートリッジのみの色ですが、これが意外と好き。かなり派手なピンクで発色も結構強く、乾くと少し金属光沢が出てくる感じで、面白い色です。女の子には喜ばれるかもしれませんが、仕事ではアンダーラインくらいしか用途が見当たらない・・。耐光性はそこそこです。