U-Maの音楽館

FISHER


FISHER(フィッシャー) アメリカ

 高級筆記具の売り場に弾丸が置かれているのを見たことがあるでしょうか? それはフィッシャーのブレットとというボールペンです。フィッシャーはアメリカに初めてボールペンを紹介したレイノルド・インターナショナル・ペン・カンパニーの従業員だったポール・フィッシャーにより、1948年に設立されたボールペンメーカー。NASAに採用されたスペースペンが有名で、加圧窒素を封入することで、無重力状態でも筆記でき、上向きで使用してもインクの切れを起こさないという画期的なものです。スペースペンのインクはやや粘性があり、ねっとりした書き味で、こういう感触のボールペンは書き出しの掠れが起こりやすいのですが、スペースペンは加圧されているためインクの出がスムーズで、掠れはほとんど起こりません。フィッシャーのボールペンは外観も凝っていて、飛行機を連想させるエアプレーンペンや、弾丸をイメージしたブレット(ブレットシリーズには本物の薬莢を使用した物もある)など、一風変わった面白いボールペンを製造販売しているメーカーでもあります。また、スペースペンはフィッシャー独自規格ですが、替え芯に付属しているアダプターを装着するとパーカー互換タイプに変身します。パーカー互換タイプのボールペンで書き味が気に入らなければ、スペースペンを入れてみるという手もあります。

 ちなみにかつては、宇宙空間で鉛筆を使っていたそうです。鉛筆なら押しつけて書けばどこでも使えるわけですからね。しかし、鉛筆の芯はグラファイト(炭素)と粘土で出来ていて、電気を通すため、鉛筆の芯が折れて、あるいは粉が飛散し、万が一制御部に入り込んで配線をショートさせてしまうと、最悪の場合航行不能となるなど深刻なダメージを与える可能性が否定できない。なので電気を通さない油性ボールペン(のインク)を宇宙空間で使えるようにするのは、非常に画期的な発明だったようです。宇宙空間だと鉛筆の芯みたいな物でも注意しなければいけないのですね。


BULLET(ブレット) お勧め品
キャップ式ボールペン

 日本での正式名はブレットですが、バレットと発音した方が分かりやすいかもしれませんね。弾丸という名のボールペンで、中には本物の使用済み薬莢をボールペンに仕立てた物もあります。

 ブレットには十数種類のバリエーションがあり、本物の薬莢を使用した物以外も、弾丸をイメージした形状になっています。


        フィッシャー ブレット 400RB レインボー ボールペン  キャップを抜いてペン尻に挿すと丁度よい長さになる


 私はこの400RB レインボーを選択しました。日本人の大好きな玉虫色です♪ これは表面にチタンを張り、陽極酸化することでチタン表面に酸化チタンの薄膜を付け、その膜厚の微妙な変化で、このように多彩な干渉色を発します。決して塗装しているわけではありません。私が一番欲しかった筆記具はシェーファー アジオ プラズマ、プレリュード プラズマでしたが、アジオ プラズマはすぐに売れてしまったようですし、プレリュード プラズマは輸入したかどうかも定かではない。なので今となっては見ることもほぼ無く(2017年5月、玉川高島屋内の伊東屋でアジオ プラズマのボールペンが展示されていましたが、もちろん非売品でした)、代わりに現行品で同じことをやっているブレット 400RBを入手した次第です。こういう変わったことをしている物が大好きなのです。

 キャップを閉めた状態では非常に小さく、ポケットにすっぽり入ってしまいますが、キャップを抜いてペン尻に挿すと、丁度よい長さになります。これは挿さないとさすがに書きづらいですね。持ち手の部分は同心円状に凹凸加工されており、グリップした際に滑りにくくなっています。持ち手の部分が金属の物は滑りやすいのですが、これはなかなか良いです。また、色の面白さが目をひきますが、意外と形も気に入っています。

 書き味はさすがスペースペンです。私好みのねっとりした感じがあり、なおかつ掠れはほとんどありません。ただ、唯一の難点が、替え芯が若干がたつくところ。でもキャップ式で、芯を出したり引っ込めたりしないので、私は替え芯の先端部分にパラフィルムを巻き、がたつきを解消しています。これさえなければ最高なのですが、そこはアメリカ製。イマイチ大雑把というか何というか・・。

 なお、ブレットEF−400(RB400と同型で、綺麗なクロムメッキ仕上げ)は、その美しい形状からニューヨーク近代美術館に永久展示されているそうです。

 そしてこれ(↓)が、.338口径ラプアマグナム弾の薬莢を使用したブレット338。頂き物です。薬莢の底の部分にはLAPUAの刻印が入った本物です。


        フィッシャー ブレット338 ボールペン

 ブレット338は狙撃用のライフル弾を模した物で、薬莢(キャップ)から先端の弾の部分を抜くいて、ボールペンとして使用します。中身は同じフィッシャー スペースペンなので、400RBと大差ありません。似たような物にブレット375というのがありますが、あちらは狩猟用の.375口径ライフル弾を模しており、わずかに軸が太く、先端があまり細くならず丸くなっています。

 余談ですが狙撃弾は先端までジャケットに覆われ、先が尖っていますから貫通力が高く、劇画・ゴルゴ13で、撃たれた人物の額や眉間に小さな穴が開くように描かれていますが、あんな風に人体を貫通していきます。狩猟弾で撃たれたら、顔が吹っ飛ぶでしょうね。先が丸かったり、軟らかい中身(鉛など)が露出したりしているため、貫通力が著しく低下しますが、弾丸は運動エネルギーをより大きく損失しますから、その分が破壊力へと転換するのです。狙撃弾でも頭や心臓を撃ち抜かれればお陀仏ですが、基本的には標的を戦闘不能にするための物。組織の損傷が少ないため、急所を撃ち抜かれない限り、適切に治療すれば死にはしません。一方狩猟弾は一撃で仕留める必要があるため、破壊力を高めているのです。なので、たとえ戦争とか凶悪犯の狙撃であっても、狩猟弾なんか使用したら非人道的と非難されます。

 いずれにしてもこのような形状の物ですから、飛行機には持ち込まないよう、輸入代理店から注意喚起されています(当然そうなりますね)。交番や警察署の前で取り出すのもやめておきましょう。