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FABER-CASTELL


FABER-CASTELL(ファーバーカステル) &
GRAFVONFABER-CASTELL(グラフ・フォン・ファーバーカステル) ドイツ

 ドイツの名門中の名門で、現存する筆記具メーカーとしては世界最古の歴史を誇ります。1761年にニュルンベルク近郊の町でカスパー・ファーバーが鉛筆製造所として創業し、後継者ローター・フォン・ファーバーが、1851年に鉛筆の長さ・太さ・硬度の基準を制定。世界中の鉛筆は、150年以上経った今でもこの基準を元に製造されております。

 1881年にバイエルン王国から男爵の爵位を授与されますが、ローターの後継者であった長男ウィルヘルムと孫息子たちが早世したため、孫娘のオッテリーが後継者となりました。オッテリーは1898年にアレグザンダー・ツー・カステル=リューデンハウゼン伯爵と結婚し、アレグザンダーが当主となり、その際「ファーバーの名を残す」というローターの遺言により、家名をファーバーカステル伯爵家と改め、社名も変更されました。二人は1916年に離婚し、それぞれ再婚しましたが、アレグザンダーは社の経営を続け、死後に経営権と爵位を、アレグザンダーとオッテリーの息子であるローラントが引き継ぎ、現在もファーバーカステル伯爵家が経営を続けています。現在では従業員5千人を超える大企業になっているようで、その製品は世界中で愛好されています。

 高級品はグラフ・フォン・ファーバーカステル(ファーバーカステル伯爵コレクション)というブランドで販売しており、中でも象徴的なのがパーフェクトペンシルでしょう。エクステンダー付きの鉛筆が何と30,000円以上という、超高級品。もっとも、価格の大部分はエクステンダーなのですが、レフィルも5本セットで6,500円と、かなりのお値段。アメリカ産杉材の、木目が綺麗に出る部分だけを使い、蜜蝋を何度も塗り重ねた逸品だそうです。使った事はないですけど。一方、ファーバーカステルブランドからは、リーズナブルで使いやすい筆記具を数多く出しており、ラインナップはかなり幅広いです。

 万年筆、ローラーボール、ボールペン、メカニカルペンシル、鉛筆と、筆記具全般を網羅していますが、中でも色鉛筆は有名で、初心者用からプロが使用する物まで、様々な商品が販売されています。


GUILLOCHE(ギロシェ) お勧め品
18Kニブ、嵌合式キャップ、両用式

 グラフ・フォン・ファーバーカステルブランド品。ギロシェとは波縞模様のことで、円筒形の胴軸に模様が刻まれているのが特徴です。キャップは天の部分がやや太くなり、上面が少しくぼんだ独特な形状で、側面に取り付けられたクリップは、これまた独特な形状。このクリップはバネ仕掛けになっており、布地を傷めないよう配慮されています。

 この独特な形状は品の良さと伝統を感じさせますが、割と好き嫌いがはっきり出る形状ではないかと思います。代わった物が好きな私は後回しにしていたのですが、いざ手に取ってみると、なかなか良い質感で、伯爵コレクションの名に恥じない物だと思います。


        グラフ・フォン・ファーバーカステル ギロシェ ブラック 万年筆 細字

 画像から分かるように、キャップをペン尻に挿すとかなり長くなり、後ろがだいぶ重くなります。この状態で思い切り寝かせてサラッと書くのが私流なのですが、慣れない方はキャップを外したまま書く方が扱いやすいでしょう。そもそもファーバーカステルのカタログには、「本カタログの写真ではキャップが尻軸に挿さっていますが、一部のモデルはキャップを机に置いての筆記を想定して重量バランスが設計されております」と明記してあります。ニブは18Kで、あまり硬くなく、ややしなやかな印象で、書き心地も良い万年筆です。シックで品の良いデザインですから、ビジネスシーンでも使えるでしょう。一方で、ギロシェからは近年、オレンジやピンクなど、カラフルな軸色が登場し、人気となっております。遊び心があって面白いのですが、大事なシーンではやはりシックなブラックが良いでしょうね。この上には手の込んだシスレー アンスラサイト、美しい光沢のロジウムがありますが、個人的にはブラックで良いような気がします。


AMBITION(アンビション) お勧め品
ステンレスニブ、嵌合式キャップ、両用式

 ファーバーカステルブランドのエントリーモデル。大まかな形状はギロシェに通ずるものがありますが、細部はだいぶ省略されています。でも明らかな安物感はなく、手ごろな価格で扱いやすい万年筆です。


        ファーバーカステル アンビション レジン 万年筆 極細字

 アンビション レジンの胴軸表面は木の繊維のような細かな筋が入っていますが、樹脂製で、木材の感じを出すよう細工されています。その他に模様が刻まれたオプアートや、木軸、ステンレス軸の物がありますが、これが一番安く、ココスウッドなどは、倍以上の価格になります。

 ニブはステンレスで、ハート穴もありませんが、ニブの湾曲が緩やかなためか、若干の撓りがあり、極端にガチガチではありません。極細字は国産の細字と遜色ないほど細く、割と日本語の筆記に向いている感じです。ただし、この万年筆もギロシェと同様、キャップをペン尻に挿すとかなり後ろが重くなりますから、キャップを外したまま書く方がバランスは良いと思います。

 アンビションシリーズで輸入している物は、オプアートが中字のみ、その他は極細字と細字という商品構成になっており、デザインによって字幅が限られてしまうので、そこがちょっとネックにはなりそうですが、書きやすい万年筆で、なかなかのお勧め品です。

 この万年筆はコンバーターが付属しておりますから、ボトルインクを吸入して使う事もできますし、ペリカンなどで販売しているヨーロッパサイズ・ロングのカートリッジを使う事もできますが、下図のように、ショートサイズのカートリッジを挿した上で、さらにもう一本を逆向きに、胴軸に仕込む事ができます。こうしておくと出先でインク切れを起こしそうな時にも素早く対応できて便利です。純正のカートリッジを使うのであれば、このような使い方もありということで。


        アンビションの胴軸にはカートリッジがもう一本入る。予備カートリッジは差し込み口を下にする。


GRIP2011(グリップ2011) お勧め品
ステンレスニブ、嵌合式キャップ、両用式 

 ファーバーカステルのカジュアル万年筆で、グリップ2010と共に2018年に販売されましたが、2020年のカタログには載っていません。低額品につき、大量に輸入してディスプレイ台とセットで箱ごと納品し、市場で全部捌けるまでは輸入しない・・って感じなのかな。ラミーのサファリなども同じような売り方をしていますが(ちなみにファーバーカステルとラミーは、同じ輸入代理店)、サファリほどのインパクトはないですね。

 人間工学に基づいたデザインで、ラバーの首軸と、胴軸に突起が整列しているのが特徴。2010と2011は全く同型で、2011の方が色使いが大人しく、胴軸に並んでいるドットは同じ色ですが、2010は明るめのカラーリングで、ドットは本体よりもさらに明るい色になっており、ポップな印象を受けます。価格は2011の方が若干高めですが、2011は万年筆、0.7mmメカニカルペンシルのラインナップで、2010は万年筆、0.5mmメカニカルペンシル、ボールペンというラインナップになっています。


        ファーバーカステル グリップ2011 メタリックブルー 万年筆 細字

 この万年筆はキャップをペン尻に挿すと、ペントレイの幅一杯まで長くなってしまいます。軽いので挿して書いても問題はないのですが、そもそもカタログにもキャップを外した写真が出ているので、キャップは外したまま書いて下さいって事でしょうね。スチールニブですが、これもある程度撓りがあり、ガチガチに硬くはなく、書き心地は悪くない・・というより、私にとってはラミー サファリよりもこっちの方が好きです。インクの出がよいので、こちらの方がよほど楽に書けると思います。でも売れているのはサファリなんだよな・・。会社に置きっぱなしにする青インク用の万年筆として、手ごろな価格だから買ってみたのですが、書き味は思ったよりも良かったという代物。考えてみたら名門で一流の筆記具メーカーなのだから、明らかに低品質な物は出してこないか。

 なお、この万年筆もアンビションと同じように、ショートサイズのカートリッジが2本入ります。