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PLATINUM


プラチナ萬年筆(PLATINUM PEN CO.,LTD.) 日本

 1919年創業の、万年筆を主力とするメーカー。創業当時は中屋製作所といい、中屋の商号は、プラチナ萬年筆の職人が創業した会社(現在では子会社)に受け継がれています。カートリッジインクをいち早く取り入れ、万年筆をより使いやすい物とした他、日本語の筆記しやすさに重点を置いた物作りが特徴。特に細字や極細には定評があります。また、日本で唯一、昔ながらのブルーブラックインクを今でも採用しているメーカーでもあります。万年筆を購入する際にサービスカートリッジが付いてくることが多く、多くのメーカーはブラックを標準添付か、ブラック/ブルーブラック/ブルーから選ぶような形ですが、プラチナ萬年筆はブルーブラックを標準で添付しているようです。プラチナ萬年筆にも#3776センチュリーの上位品や出雲などの高級品を出していますが、中屋では注文に応じてカスタマイズした高級品を提供しており、より自分好みの一本に巡り会えるかもしれません。

 ただ、当たり品はすごく良いのですが、残念ながら筆記の際にガリガリと引っかかる個体もあり、国産としてはややばらつきが多い感じがします。もっとも万年筆はそもそも個体差が大きい物なので、プラチナ萬年筆の品質が特に悪いわけではありません。万年筆は試し書きが必須ってことですね。


プレジデント(PRESIDENT
18Kニブ、ネジ式キャップ、両用式

 プレジデントは#3776センチュリーよりも上位品という位置づけ。競合他社がいくつもの上位品を用意しているのに対し、プラチナ萬年筆はこれだけ。もちろん#3776センチュリーの蒔絵軸・18Kニブの物や、プレジデントの上の出雲、あるいはメタルコレクションなどの上位品もありますが、これらは軸が蒔絵や凝った材質の物になっていて、装飾品の要素が強くなっていますから、オーソドックスな造りで上位と言えるのはプレジデントだけになります。

 さらに、プレジデントは、競合他社の上位品とは一味違います。パイロットもセーラー万年筆も、上位品はより書き味が柔らかく、心地よい感じに作られていますが、プレジデントは逆に、#3776センチュリーよりも明らかに硬質でガチガチのニブです。プレジデントは18Kニブですが、そのコンセプトはヘビーライター向けの上級品で、様々なスタイルでハードに書きまくるユーザー向けに、筆圧が高くてもそれに耐え、殴り書きのように書かれてもそれに耐えるだけの強さを備えています。筆記角度の許容範囲も#3776センチュリーよりも広く、かなり立てて書いても滑らかさを保ちますし、意図的にペンを少し左右に傾けて書いたり、斜めに構えて書いたりと、色々な書き方で試してみましたが、どんな書き方にも対応する幅広さを持っていて、#3776センチュリーとは全く方向性が異なります。なので、上位品と言うよりは、最初から別路線と考えて良いでしょう。ニブに18Kを採用するなどしているため、#3776センチュリーよりも高くなってしまったということで、価格的には上位品・・というだけのことです。


        プラチナ萬年筆 プレジデント ブラック 万年筆 細字

 という商品なので、その評価は賛否両論。少なくとも柔らかな感触を好むユーザーからはこき下ろされるような万年筆です。なので柔らかな書き味を求めている方は、候補から真っ先に外して下さい。しかし、筆記線がシャープな上、相当速筆しても線が切れないなど、非常に使いやすい面も持っています。もちろんニブは強いですから、やや雑な書き方をしてもびくともしません。私の感想としては、書き味はともかく、使いやすさ(特に何の気兼ねもなく書ける)という点では満点です。それに、硬いとは言っても、力を抜いて書けばガツガツと当たるような感触にはならないので、私個人としてはそこまで硬いという感じはないです(ただ、わざと筆圧を掛けて書くと、やっぱりガツガツと紙に当たります)。書き味の面では酷評されることの多い万年筆ですが、それだけではこの万年筆の評価はできないということですね。私が思うにこの万年筆は、筆圧の高い人が多くなってきたのでしょうがなく硬くした・・というものではなく、信念を持ってハードな使用に耐えられるものを創り出した物なのでしょう。積極的にお勧めする物ではないのですが、とにかく万年筆を使って書きまくる人は、一度試してみるのも良いと思います。ただ、#3776センチュリーが大当たりした今、プレジデントはその影に隠れておりますし、プラチナ萬年筆の商品は扱っていてもプレジデントは置いていない店もあり、置いてある店でも売れてしまうと次回の入荷は見通しが立たない状態とか。生産量も少ないようなので、もし欲しければ即決した方が良いかもしれません。

 軸は#3776センチュリーよりも一回り大きく、特に中央部が太くなっていて堂々とした印象です。また、スリップシール(インクの乾燥を防ぐ機能)は付いていませんが、その分ネジ山の段差も小さく、ネジ山部分を持ってもあまり気にならないです。ヘビーライター向けですから、スリップシールは必ずしも必要ではないですね。

 以上のことから、とにかく毎日のように書きまくる方に試して頂きたい万年筆です。


#3776センチュリー(#3776 CENTURY) お勧め品
14Kニブ、ネジ式キャップ、両用式

 プレジデントがヘビーライター向けの商品なのに対し、#3776センチュリーは割と万人向けな造りとなっています。軸はバランス型で、国産三社の金ペンエントリーモデルでは、最も太い軸です。プレジデントよりは若干細く、尻軸の部分が短くなっています。

 このシリーズは実に幅広く、ブラックインブラック(不透明黒)、シャルトルブルー(透明で深い青)、ブルゴーニュ(透明で深い赤)のゴールドトリム(金装飾)がベーシックモデル。その上にブラックインブラック、ブラックダイヤモンド(透明黒)、シャルトルブルーのロジウムトリム(ロジウム装飾)があり、もう一段上にスケルトンタイプのニースと限定品の富士五湖シリーズが。さらに上にはセルロイド、蒔絵、高級蒔絵などと際限なく広がり、下は1万円から上はン十万円というラインナップ。分かりにくいですが、ここではベーシックなゴールドトリムタイプとロジウムトリムタイプを紹介しましょう。上の方に行くとニブが18Kのものもありますが、基本設計は同じです。

 ゴールドトリムタイプは1万円、ロジウムトリムタイプは1.5万円です。普通ロジウム装飾タイプというと、ニブのみがロジウムメッキ仕上げで、他の装飾部品はクロムメッキやニッケルパラジウムメッキが多いのに対し、プラチナ萬年筆のロジウムトリムは、クリップやリングまで全てロジウムメッキになります。ロジウムメッキは金メッキに比べて耐久性ははるかに上ですから、長く綺麗に使いたいならロジウムトリムタイプもありでしょう。少し高くなりますが、それなりの価値はあるでしょう。そもそもこの価格差は、むしろロジウムトリムタイプが適正価格で、ゴールドトリムタイプは無理して1万円を維持しているような気がします。そしてついに2018年追加カラーから、ゴールドトリムタイプも13,000円に値上げし、従来からあるカラーも、キャップリングの仕様を変更した上で値上げに踏み切ったようです。さらに今ではゴールドトリムが15,000円、ロジウムトリムは18,000円になってしまいました。

 ブラックインブラックはオーソドックスな黒ですが、シャルトル大聖堂のステンドグラスをイメージしたシャルトルブルーと、ブルゴーニュのワインをイメージしたブルゴーニュ。この2色は非常に綺麗な色を出しています。なお、ブルゴーニュにロジウムトリムはありません。プラチナ萬年筆では、このブルゴーニュに合わせて金メッキの色を見直したというほど熱を入れていたようで、そこまでしておいてロジウム(銀色)は出さないでしょう。と思っていたら出しました。


        プラチナ萬年筆 #3776センチュリー 万年筆  上:シャルトルブルー 細字  下:ブルゴーニュ 極細字

 #3776センチュリーの大きな特徴は、スリップシール機能を内蔵していること。これはバネでインナーキャップを首軸に押しつけることで、インクの蒸発を防ぐというもので、しばらく放置した状態でもペン先のドライアップが起こりにくく、たまにしか使わない人にも嬉しい仕様です。確かにこの万年筆、しばらく放置しておいてもインクの色がほとんど変わらない(普通はインクの水分が蒸発し、書き出し時に筆記線が濃くなります)ので、1年書かなくても乾かないと豪語するのも分かります。もっとも、書きやすく使いやすい万年筆なので、たまにしか使わないのは勿体ないですけどね。

 ニブは14Kで、金ペンエントリーモデルとしては大型で、平たく成形されています。湾曲が少ないためややしなりやすく、硬めのニブではありますが、ややふわふわした感触もあり、なかなか良くできています。ペン種は超極細字(UEF)、極細字(EF)、細字(F)、細軟字(SF)、中字(M)、太字(B)、極太字(C)があり(ただしシャルトルブルーとブルゴーニュのUEF、SF、Cは不定期生産)、ブラックインブラックのみにミュージック(MS)があります。特にお勧めは細字以下で、細字のプラチナと言われるように、シャープな筆記線と、細い割に書き味が良いところが魅力です。プラチナ萬年筆は少しシャリシャリした書き味も特徴ですが、私は適度な抵抗感で書きやすいと思います。細軟字は確かに柔らかく、実際先端部分が良くしなるのですが、書いた印象としてはパイロットの細字軟ほどは柔らかくない感じです。プラチナ萬年筆の細軟字は地金を薄くして軟らかくしているのではなく、地金の処理の仕方を変えて柔らかくしているようで、細軟字を生産する際には他のニブを製造できなくなる(機械を細軟字用に調整する)ため、余裕のある時にしか生産されず、数はそれほど多くないらしいです。筆圧が弱めの方で、#3776センチュリーの細字が希望で、店頭にたまたま細軟字があれば、細字と細軟字をじっくり書き比べてみるのも良いでしょう。#3776の試し書き用セットを置く店も最近は増えています。ミュージックは音符用ですが、普通に筆記してもかなり扱いやすく、普通にサラッと書いただけで、味のある字が書けます。ミュージックニブとしては恐らく他メーカー品よりも扱いやすいですが、表現力はパイロットのカスタム74の方が上かもしれません。

 全般的に良くできた万年筆なのですが、人によって嫌がるのが、キャップを締めるためにあるネジ山部分の段差です。丁度この部分を持つ人には違和感があるでしょうね。これはスリップシール機能を付けて、ネジ式のキャップを装着するのには避けられない仕様のようですが、セーラー万年筆のプロムナードは同じような機能付きですがそんなに段差はないぞ・・。まあ、私はあまり気にならないのですが、実際に持ってみて決めるのが良いでしょう。

 お気づきでしょうが商品名の3776は富士山の標高。日本一の万年筆を造るという意気込みでしょうか。そしてこのシリーズは、富士山にちなんだ限定品を出しており、2016年までは富士五湖シリーズが、そして2017年からは富士旬景シリーズがスタートしました。


銀無垢(SOLID SILVER)
18Kニブ、ネジ式キャップ、両用式

 まるで捻りのないストレートな品名で、軸とキャップはライン加工されたスターリングシルバー。約42gの割と重い万年筆です。ニブは3776ニブの18Kタイプで、14Kの#3776センチュリーよりも少し軟らかい印象です。さすがに新品を買う気にはなりませんが、割と程度の良さそうな中古品が出たので飛びついてしまいました。何故って、銀が好きだからです。大柄な軸に美しい銀の輝き、そして装飾は金メッキ。金ピカは決して好きではないのですが、銀に金装飾ってのは好きなのです。


        プラチナ萬年筆 銀無垢 万年筆 細字

 重い軸を3776ニブがしっかり受け止め、書き味は滑らか。定評のある3776ニブですが、18Kはこれが私にとって初めてでしたが、一発で気に入りました。かつて3776の18Kニブは蒔絵万年筆などにも設定されていたと記憶しているのですが、現行品ではもしかしたらこれだけかも。まあ、14Kでも十分書き味は良いので、これに手を出す必要もないとは思いますがね。これを購入したのは銀好き故の衝動です。なので銀が好きな人にはお勧めします。

 ちなみにこの上には鍛金磨きという銀を鍛造した軸のやつがあり、しかもニブは珍しいPt790、つまり19K白金ニブです。ただ、新品では十万超えだし、中古もほぼ出てきませんので諦めています。ただ、白金ニブには興味があります。今では白金よりも金の方が高くなってしまいましたから、白金ニブを開発するメーカーが出てきても良いと思いますが、どうなんでしょうか。ヴィスコンティの23KPd950(23Kパラジウム)ニブは、一時パラジウムが金よりも高くなってしまったため生産をやめたようですが、白金なら極端に硬くないわけだし、ニブの材質としては十分検討する余地はあると思います。とは言ってもステンレスで上等な物が作れますから、もうそこまで貴金属にこだわる必要はないのかもしれませんね。

 なお、写真ではペン尻にキャップを挿しておりますが、この萬年筆はほぼ固定されずユルユルなので、キャップを挿して書く仕様ではないのでしょう。


美巧(VICOH) 18Kタイプはお勧め品
旧18Kスタンダードは18K、旧14Kスタンダードとシープは14K、双龍はステンレスニブ、いずれも嵌合式キャップ、
両用式

 美巧は旧18Kスタンダード、14Kスタンダードに、新たに双龍が加わったラインナップ。どうやら昔ながらの形状のニブを装着したシリーズのようです。ただ、14Kタイプは生産終了品です。

 美巧18Kタイプは18Kの小型ニブと細身の軸です。これは18Kニブでは最安値。樹脂製・無装飾タイプが1万円、近代蒔絵が1.2万円、金沢箔が1.5万円、加賀平蒔絵が2万円というラインナップです。だったのですが、2020年夏に確認したところ、無装飾と加賀平蒔絵は廃番、近代蒔絵は1.8万円、金沢箔は2万円に値上げしています。それと、14Kタイプはシープを含めて廃番です。金の価格が落ち着くどころかさらに高騰し、先日ついに1g7,000円を突破、という状況ですから、18Kニブの万年筆では、従来の価格を維持するのは難しいのでしょうね。なお、近代蒔絵というのはシルクスクリーン蒔絵のことで、型を使って大量生産することのできる蒔絵だそうです。

 私のは近代蒔絵のウメニウグイス、細字です。これくらいの価格であれば、蒔絵もまあ良いかなと思い、これを選択。柄はツル、ホウオウとこれですが、小鳥と花が好きな私は迷わずこれです。胴軸の上面のみにワンポイントの蒔絵が入るのですが、あまりごてごてしている物よりもこのくらいの方が私好みです。キャップには蒔絵は入らず、普通の黒いキャップです。なお、加賀平蒔絵や金沢箔は、キャップにも装飾が入ります。

 18Kニブは腰があり、硬めですが書き味は思ったよりも良いです。大きな特徴はなく無難な万年筆ですが、日本語が書きやすく、それ故に昔からのファンが多いようです。壊れたら修理し、修理不能となれば同じ物を購入するという年配のユーザーが指名買いしていくようですね。無難で飽きの来ない確かな品質の物というイメージです。これは隠れた名品と言っても良いでしょう。ただ、インクを吸入して使用すると、経年劣化で口金(首軸の先端部分にある金属部品)のメッキが傷む事があるようです。14Kタイプはそれを解消するため、口金をクロムメッキに変えているようです。


        プラチナ萬年筆 上:美巧(18Kスタンダード) 近代蒔絵 ウメニウグイス 万年筆 細字
                  下:美巧(14Kスタンダード) レッド 万年筆 細字

 美巧14Kタイプは、18Kタイプに比べ、軸の長さはほぼ同じですが若干細く、より軽いです。ニブは18Kタイプよりもさらに小さい14Kニブが装着されていますが、これは意外と柔らく、18Kタイプよりもむしろ軟らかい感触です。ただ、ちょっとざらざらした感触があり、書き味は微妙。パイロットのセレモと同じく価格は5000円で、最安値の金ペンですが、お勧めなのはセレモかな。私のは初期状態からわずかに引っかかりがあったので、ペンポイントを自分で少しだけ研いで、今ではかなり滑らかな書き味になっています。でもこれ、今では手元にありません。仲の良い同僚にあげちゃいました。パイロットのセレモ、ウォーターマンのメトロポリタンとこの14Kスタンダードをあげたのですが、中でもこれが一番お気に入りとか。

 美巧 シープは美巧14Kタイプの上位品で、牛革をタンニンで鞣し、胴軸とキャップに巻いた物で、価格は倍になりますが、上品な仕上げで女性に人気なようです。

 美巧 双龍は次項のバランスを豪華に装飾した感じ。ステンレスニブですし、柄も好きなタイプではないので、あまり興味はありません。


バランス(BALANCE) 生産終了品 お勧め品
ステンレスニブ、嵌合式キャップ、両用式

 3,000円という低価格品で、店頭ではガラスケースに入っている場合もありますが、透明なスリーブ付の紙箱に入って「万年筆 3000円 税抜」という楕円形のシールが付いて並んでいることの方が多いです。

 軸は不透明と透明があり、不透明軸は艶々したアクリル樹脂の黒、赤、青、緑で、これらはニブも装飾部品も金色。一方透明軸は無色透明、水色透明、ピンク透明の3つで、ステンレス無垢のニブに、装飾部品はクロムメッキです。不透明軸は安い割に見栄え良く、価格よりは高級な物に見えます。まあ、よく見ると安っぽいのですが・・。透明軸はその宿命として安っぽく見えますが、軸色は綺麗です。どちらを選ぶかですが、カラフルな色のインクを使うなら透明軸、無難な色のインクを使うなら不透明軸という感じでしょうか。私の経験上、透明軸のやつは付属のブルーブラックインクを使っても問題ないのですが、不透明軸(ニブが金色)は、付属のブルーブラックと相性が悪い気がします。最初は不透明軸にブルーブラックを入れていたのですが、すぐにインクが固まってしまってフローが悪い。そこで根気よく洗浄した後、他のインクに変えたら普通に使えている。で、この透明軸をブルーブラックにしたのですが、こちらは全く問題ありません。原因については不明ですが、金色のニブが金メッキでなくゴールドIPなどであれば、鉄イオンの酸化反応を促進し、インクが固まってしまう可能性はあります。ゴールドIPは表面が窒化チタン。酸化チタンには明らかな酸化力がありますから、窒化チタンにも同様な作用があるならば、辻褄が合います。そうなると、ブラックIP(表面は炭化チタン)仕様の万年筆にも、没食子インクを入れるのはやめておいた方が良いかもしれません。


        プラチナ萬年筆 バランス クリスタルブルー 万年筆 細字  コンバーターは別売

 形状的には昭和の時代によく使われていた万年筆で、バランスという名称は、単にバランス型の軸だからバランスと呼んでいるようなものだそうです。プラチナ萬年筆らしいですね。

 ニブはスタンダードタイプのステンレス製ですが、これは意外なほどよくできています。ステンレスニブは硬い物が多い中、このニブは少しの力でしなります。書き味もステンレスニブの中では柔らかめで、意外なほど良い。さらに日本語の書きやすさはさすが国産品。ということで、万年筆を使いたいけど高いのは・・とか、事務用に安くて書きやすいのが欲しいとかいうニーズにバッチリ対応しそうです。安い割に良い万年筆で、ステンレスニブの製品の中では一番のお勧め品です。残念ながら2020年(あるいはもう少し前)に販売を終了したようですが、店頭にはまだあると思います。

 ちなみにバランスの不透明軸・青は、2016年のNHK朝ドラ・とと姉ちゃんのオープニングとエンディングで、背景に添えられていた万年筆です。そのためバランスの不透明軸が一時的に売れて、品薄になったようです。そしてそのドラマで印象的に使われていた万年筆がシェーファーのPFM II。編集長が原稿を書く際に使っていた、独特な菱形の、インレイドニブの万年筆です。PFM IIははるか昔の万年筆ですが、似た感じのレガシー ヘリテージが売れたとも聞いておりません。価格的なこともあるでしょうが、店頭に置いてある店も少なかったので、せっかくの機会も全く生かせられなかったというところでしょうか。


プレピー(PREPPY
ステンレスニブ、嵌合式キャップ、公式にはカートリッジ式

 万年筆といえば、高価な物という印象ですが、そんなイメージを覆す商品がこのプレピー。価格は300円(極細は400円)です。しかもペンポイントにはイリドスミンを使っているという、ちゃんとした物です。これくらいの値段で万年筆っぽい商品は他にもありますが、インクの補充ができる、ペンポイントは摩耗に強いという万年筆の条件をちゃんとクリアしているのがこのプレピー。100円ショップの万年筆がどんな物かは知りませんが、一般的な文具店で売られている物の中では最安値でしょう。

 ニブはステンレスのガチガチニブですし、書き味も硬く、少しだけ筆圧を掛けないとインクが出なかったりもするのですが、割と書きやすく、300円という価格を考えたらこんな物でしょう。パイロットのカクノの方が万年筆らしい感触だと思いますが、この価格は魅力ですね。しかもこれは、こんなに安くてもプラチナ萬年筆ご自慢のスリップシール付き。インクが乾きにくく、たまにしか使わない人にもバッチリ対応します。ちなみに0.5mmが中字、0.3mmが細字、0.2mmが極細字です。キャップの頭の部分と、胴軸のPREPPYのロゴの部分に字幅が印刷されています。


        プラチナ萬年筆 プレピー 上からピンク、グリーン、ブルーブラック いずれも細字の万年筆

 上の写真に写っているのは旧タイプ(200円だった頃の物)で、現行品は透明ブルーや透明グリーンなどに着色されています。軸やキャップはポリカーボネート製で、なおかつ商品名などが軸に直接印刷されているため、どう見ても安物にしか見えません。仕事で使うのであれば、ペン先ユニットは同じで軸が塗装アルミニウムのプレジールの方が見栄えがよいと思います。いずれも安くて気軽に使える万年筆としてはありでしょう。私もマーカー用として何本か会社に持ち込んで使っています。公式にはカートリッジ式ですが、実はコンバーターを装着して好きな色のインクを吸入することもできるのですが、コンバーターは500円・・。コンバーターの方が高いという落ちです。私は何本か、胴軸に直接インクを突っ込むというイレギュラーな使い方をしています。ある事をしないと、胴軸と首軸のネジ接合部分からインクがダダ漏れしてしまいますから、よい子は真似しないように。


ダブルアクション R3(DOUBLE ACTION R3
ツイスト式多機能ペン(メカニカルペンシルの芯繰り出しはキャップスライド式)

 ダブルアクションR3はマルチファンクションペン(多機能ペン)。そもそも私は多機能ペンという物があまり好きではなく、一本でマルチに使えるというのは魅力なのですが、どうしても軸が太かったり、芯がやや斜めに出ているため筆記に違和感があったりするのですが、これは意外と私に合っているようです。

 中身は黒・赤のボールペンと0.5mmのメカニカルペンシルで、ツイストアクションで芯を切り替え、メカニカルペンシルはキャップスライド式でノックします。尻の黒いキャップを外すと中に消しゴムが収納されています。


        プラチナ萬年筆 ダブルアクションR3 近代蒔絵 ウメニウグイス 多機能ペン

 ダブルアクションシリーズはかなりのバリエーションがありますが、私は美巧に合わせて近代蒔絵 ウメニウグイスをチョイスしました。この絵柄、なかなかお気に入りです。中に入っている芯は安いボールペンに入っているような物で、何だかなぁ・・という感じですが、今流行の低粘性ではなく滑り感は適度で、その点では気に入っています。何しろ私は重い軸や太い軸で低粘性インクだと、全くペン先のコントロールが効かなくなってしまうのです。そして、この軸は金属製ですが、塗り仕上げなので手に吸い付くようなグリップ感があり、その点も使いやすいところです。閉店する文具店で値引き販売していたのを購入してきましたが、多機能ペンがあまり好きではないという割には重宝しています。