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SAILOR


セーラー万年筆(THE SAILOR PEN CO., LTD.) 日本

 1911年創業の老舗メーカー。国産三大メーカーでは最も古い歴史を誇ります。セーラーという名称は、創業の地である広島県・呉に軍港があったため、それにちなんで名付けたようです。万年筆が有名ですが、意外にも日本初のボールペンを製造販売したメーカーでもあります。また、パイロット(水先案内人)のブランド名は、セーラー(水夫)に対抗して付けたということです。セーラー万年筆は上位品に21Kを採用する、世界的にも珍しいメーカー(通常14Kの上は18K)。21Kでは柔らかすぎるとされていますが、セーラーは合金の調合と特殊な焼き入れ技術を駆使し、ニブに使用することを可能にしたといいます。また、長刀研ぎ、クロスポイント、エンペラーなど、特殊な形状のニブを得意とし、個性を発揮しています(ただし2017年7月現在、これら特殊ニブの受注を受けていないようで、かなり入手困難になっているようです)。さらにはショップ限定の万年筆やインクも多く手がけています。筆記具の他、産業用ロボットなども生産しているようです。

 セーラーの万年筆はプロモーションが地味なせいか、今ひとつ盛り上がらない感じはします。形状的にもオーソドックスな物が多く、インパクトに欠ける面もあります。でも中身はよい物ですし、当たり外れは少ない方だと思います。一方で盛況なのは、ショップオリジナル商品で、セーラー万年筆の商品をベースにした物が多く出回っています(もちろんセーラー万年筆が生産しています)。オリジナルと言っても型から設計するととんでもない価格になってしまいますから、すでにある商品の樹脂色を変えたり、パール顔料やラメを入れたり、表面の処理を変えたりして、オリジナル要素を出しています。

 セーラーのネジ式キャップの万年筆は、気密性が優秀で、インクがドライアップすることがほとんど無く、いつでも気持ちよく書けます。プラチナ萬年筆のスリップシール付の万年筆以外では、恐らく世界一気密性の高いキャップ機構を備えています。インクが空っぽになるまで途切れることなく書けるというのは素晴らしいのですが、逆にインクが空になると、突然掠れて、以後全く書けなくなります。既にインクはなくなっているので、コンバーターを回したりカートリッジをつまんでインクを押し出そうとしても出てきません。持ち歩いて使うのならば、定期的にインクを吸入したり、予備のカートリッジを持ち歩くなどした方が良さそうです。

 セーラー万年筆のコンバーターは銀色の金具と樹脂のシリンダー部分がネジで接合されており、ここが簡単に緩んでしまいます。分解掃除が楽なのは良いのですが、吸入の際につまみを回すとこの部分も緩んでしまうことがあるので、吸入後はここも締めた方がよいでしょう。

 なお、私の大好きなシェーファーは、日本向けに輸出する際、セーラー万年筆をパートナーに選び、セーラー万年筆を通じて多くの製品が輸入されていましたし、互いに技術交換もあったようです(この提携はとうの昔に解消しています)。何よりセーラー万年筆がシェーファーの部品を在庫していたため、国内で修理ができ、海外品なのにメンテナンスが迅速だったことも、少なからずシェーファーの売上に貢献していたことでしょう。セーラー万年筆がシェーファー互換のボールペン替え芯を一部の製品に使っているのは、その頃の名残でしょう。シェーファーも、その頃が一番勢いがあったと思います。ちなみにセーラー万年筆の替え芯18-0300、18-0500はシェーファーK-タイプと互換性がありますが、シェーファーの替え芯K-タイプは、セーラー万年筆のボールペンには微妙に合わないようです。まあ、性能自体はセーラー万年筆の替え芯の方が良いので、シェーファーを入れるメリットはないでしょうけど。


プロフェッショナルギア(PROFESSIONAL GEAR) お勧め品
21Kニブ、ネジ式キャップ、両用式

 パイロットに負けず(?)、セーラー万年筆も品名がややこしいので整理しておきましょう。中型の14Kニブを装着した基本モデルがプロフィットスタンダードで、バランス型(両端が丸い形状の物)の軸を持ちます。プロフィットスタンダードをコストカットして(軸の太さや長さは若干違いますが)ライバルと並びの1万円で発売したのがプロムナードです。プロフィットスタンダードの中型14Kニブはそのまま(ニブの刻印や仕上げは違いますが)、軸をベスト型(両端を切り落とした形の物)に変えたのがプロフェッショナルギアスリム、そのラグジュアリータイプがプロフェッショナルギアΣスリムです。プロフィットスタンダードの軸はそのまま、ニブだけを中型21Kに変更したのがプロフィットスタンダード21。プロフィットスタンダードよりも一回り大きな軸と、大型21Kニブを装着したのがプロフィット21、プロフィット21をベスト型にしたのがプロフェッショナルギア、そのラグジュアリー品がプロフェッショナルギアΣ。プロフィット21よりもさらに大きく堂々とした軸に、特大の21Kニブを装着したのがキングプロフィットで、そのベスト型バージョンがプロフェッショナルギアKOPモデル(KOPはKing Of Penの略)。さらに派生品としてプロフィットレアロやプロフェッショナルギアレアロ(共に吸入式)などがあり、もう訳が分からなくなりますね。

 プロフェッショナルギアは、21Kの大型ニブを装着した万年筆です。すでにプロムナードを使用していましたが、より柔らかな感触を求めて21Kの購入を考えていたのですが、とある店でプロフィットスタンダード21の試し書き用が用意されていたので書いてみたところ、確かにプロムナードよりは柔らかいのですが、大型21Kニブの感触を確かめたく、その場では保留。その後、別の店でプロフィット21の試し書き用が用意されていてので書いてみたところ、プロフィットスタンダード21とはまるで違う柔らかな書き味で、これは気に入りましたね。でも、形としてはプロフェッショナルギアの方が好きで、たまたまプロフェッショナルギアの細字が在庫切れだったようで結局パス。後に安売り店でプロフェッショナルギアの細字を見つけて、それを購入した次第です。ま、結局は安く手に入ったのでそれで良いかって感じですね。プロフィットスタンダード21とプロフィット21は、同じ21Kでもニブのサイズが違い、書き味もだいぶ違いますので、別物と考えた方がよいでしょう。


        セーラー万年筆 プロフェッショナルギア 金 万年筆 細字

 プロフェッショナルギアの大型21Kニブは、当たりは柔らかいながらも、筆圧はしっかりと受け止めます。21Kといってもそんなに撓るわけではなく、パイロットの細字軟とは全く違う感触です。筆圧に対してはそんなに気にすることはなく、筆圧がある程度高い人でも対応します。とにかくスタンダードタイプとはまるで違うので、プロムナードやプロフィットスタンダード、プロフェッショナルギアスリムなどからのステップアップにもお勧めできますし、最初からこれらを飛ばしてプロフィット21やプロフェッショナルギアを選ぶのも良いでしょう。エントリーモデルのプロムナードやプロフィット スタンダードがかなり硬い感触なので、私としてはプロフェッショナルギアやプロフィット21の方が断然お勧めです。この2つは軸とニブのメッキ処理が違うだけなので、好みで選んで下さい。

 プロフェッショナルギアとプロフィット21は、2万円台の万年筆の中で最高の一本、いや、さらに上のクラスにも引けを取らない逸品だと思います。書き味良く書きやすい万年筆で、十分に生涯の友となり得る性能を備えています。私はプロフェッショナルギアの細字にBUNGUBOXオリジナルの4Bというインク(セーラー万年筆製)を入れて使っていますが、細字なのにカリカリ感はなく、柔らかな書き味で、そのくせ筆記線はとてもシャープに出ます。特に細字好きの方には、モンブランやペリカンを高い金を出して買うくらいなら、セーラー万年筆のプロフェッショナルギアかプロフィット21の細字をお勧めしたいですね(モンブランやペリカンは極細でも国産の細字より字幅が太いため)。ペンを立て気味にして書いても割と書きやすいのですが、この万年筆の柔らかさを堪能するのであれば、ペンを十分に寝かせて筆圧を掛けずに書いた方がよいでしょう。

 プロフィット21の首軸を金属製に替え、金属部品を全てIPブラック仕様としたプロフィット ブラックラスターは、荷重が前がかりになり、長時間の筆記でも疲れにくいよう工夫されています。一方同じようにプロフェッショナルギアを全身ブラック仕様にしたプロフェッショナルギア インペリアルブラックは色使いが違うだけで、基本仕様は上の写真のプロフェッショナルギア 金と同じです。ただし、ニブはIPブラック仕様ですから、レギュラー品よりもインクフローは向上していると思われます。

 プロフェッショナルギアよりも少しサイズアップし、ディテールに凝ったプロフェッショナルギアΣというのがありましたが、2020年8月で生産を終了しました。さらに上のキングプロフィットやプロフェッショナルギアKOPモデルは21K特大ニブを装着した上質な万年筆ですが、私は持ったことすらありません(こんな高いの買えないし)。


プロフィット21(Profit 21)長刀研ぎ
21Kニブ、ネジ式キャップ、両用式

 プロフィット21は前項・プロフェッショナルギアの軸違いで、21K大型ニブが付いた書き心地の良い万年筆です。違いは軸の形状とサイズ(プロフィット21は軸、キャップの先端が丸くなっている分だけプロフェッショナルギアよりも長い)、それとニブがバイカラー(プロフェッショナルギア)か単色(プロフィット21)かの違いです。軸の微妙な違いでバランス感は違ってきますが、実際に手にしてみて微妙な違いが分かれば、より自分好みの方を選べばよいでしょう。詳細については前項を参照して下さい。プロフィット21には極細から太字まで、通常のニブが揃っていますが、ここで紹介するのは特殊ニブの長刀研ぎです。


        上:プロフィット21 下:プロフェッショナルギア 先端部が切り落とされた形の分プロフェッショナルギアの方が短い。

 長刀研ぎは、セーラー万年筆創業者・阪田久五郎氏が日本語を筆記するために考案した創業当時のペン先(60年代に生産が中止された)を、現代の名工と称えられた故・長原宣義氏が復活させた物で、ペンポイントが大きく、長刀の刃のように研ぎ出されているのが特徴です。現在はその技を受け継いだ熟練工の手により生産されているようです。太字の万年筆はインクが潤沢に出てより感触が滑らかになりますが、スイートスポットが狭く、ペンの向きや当たりの角度によってはインクが上手く供給されず、ペンの機嫌を探りながらスイートスポットを見つけていく必要があるようですが、長刀研ぎは刃全体で紙を捉える感覚で、スイートスポットという概念が無いのでは?と思えるほど、捻って書いたりしても気持ちよくすらすらと書けます。使用者の書き癖を吸収し、どんな書き方でも止め、はね、払いの利いた、表情豊かな文字を書くことができるというのが大きな特徴という話です。一方でパイロットのエラボーも止め、はね、払いの利いた、表情豊かな文字を書くというのがコンセプトですが、両者は全く似ても似つかない物です。どちらが良いかは実際に書いてみるしかないですね。私個人としては扱いやすいのはエラボー、書き味は長刀研ぎですかね。


        上:プロフィット21 長刀研ぎのニブ 下:プロフェッショナルギア 細字のニブ
        デザイン的には単色とバイカラーで違いがある。横から見ると長刀研ぎのペンポイントはかなり大きいのが分かる。

 長刀研ぎにはNMF(長刀研ぎ中細字)、NM(長刀研ぎ中字)、NB(長刀研ぎ太字)という3種類があります(細字以下は構造上作れないようです)が、ほぼ標記通りの字幅になるのはペンを垂直に立てた時で、ペンを寝かせると字幅が2段階くらいは太くなります。これも長刀研ぎの大きな特徴です。私のは長刀中細字ですが、寝かせると太字よりも太くなります。ただしこれ一本で中細から極太まで・・という感覚ではないですね。中細で書けるのはペンをほぼ垂直に立てた状態ですから、そのままずっと書き続けるのは疲れます。特殊な物ですから初めて万年筆を買うという方にはお勧めしません。ですが手紙用、宛名書き用、サイン用といった用途の物を検討している方は、候補に入れると良いでしょう。多少の癖はおおらかに受け流してくれるペンですから、細字ばかり使ってきた私にもすんなり合いました。

 長刀研ぎは万年筆マニアなら一度は興味くらいは持つでしょうね。私もずっと興味は持っていましたが、細字好きで細字ばかりを集めている私にとっては選択肢に入っていなかったのです。購入に至ったのは、行間の広い便箋に縦書きで手紙を書くためのペンを一本くらい持っていたい・・と思うようになり、そのタイミングで「品薄で手に入りにくいものがたまたま店頭にあった」ため、気になって夜も眠れなくなってしまった。という万年筆ファンの悲しい性によるものです。細字だと大きな字を書いた時にやや貧弱になるのは否めませんが、これは寝かせれば極太なので、存在感のある字になります。その上太字特有のシビアさもないのですからこれは買って正解でした。ミュージックで手紙を書くのは、親しい間柄ならともかく、畏まったのを書くのは気が引けますからね。ただ、大きな不満が一つあります。インクが潤沢に供給されるので、セーラー万年筆の小さなコンバーターはすぐに空になってしまいます(笑)。カートリッジもそんなに容量は多くないので、インクの吸入やカートリッジの交換は、結構頻度が高くなるかもしれません。

 セーラー万年筆は少し前から特殊ペン先の受注を停止しており、長刀研ぎだけは受けていたようですがそれも2017年2月頃に停止。2017年度末くらいを目処に再開するようですが、今はいつ入ってくるか分からない状況みたいですね。熟練工による手作業で研ぎ出されるため、生産量に限りがあり、受注に追いつかない。裏を返せばそれだけ引き合いが多いということなのでしょうね。2018年、長刀研ぎは販売店を絞って再開しておりますが、何と全体に大幅値上げしております。特殊な研ぎの技術を使ったニブなので仕方ないですが・・値上がり前に買っておいて良かった♪


ブングボックス オリジナル万年筆 ヴェガ&アルタイル(BUNGUBOX Original Vega & Altair
お勧めしたいけどもう売り切れ

14Kニブ、ネジ式キャップ、両用式

 ブングボックスは浜松に本店を置く万年筆専門店ですが、2016年12月に東京・表参道に2号店をオープン。ショップオリジナルの万年筆とインクに力を入れており、限定品の万年筆が次から次へと出てきますし、インクも魅力的な色が揃っています。そしてここの店長がまた魅力的なんだな♪ あと、ツイスビーの万年筆は、東京ではこのお店以外では見ないです。追記:2018年頃から取扱店が増えているようです。

 ヴェガ&アルタイルは2017年夏の限定万年筆です。名称は七夕伝説の織り姫(ベガ)と彦星(アルタイル)の固有名が由来です。天の川の両岸に光る明るい星2つが織りなす天空ロマンは誰もがご存じでしょう。

 この万年筆は乳白色の半透明軸に青系のパール顔料が練り込まれ、天の川をイメージしており、天冠と尻軸は螺鈿でベガとアルタイルを表しています。ベースとなっているのはセーラー万年筆のプロフィットスタンダードです。トリムはブラックIP仕上げで、乳白色と黒の対比が見事です。キャップリングにはKYKLOS GALAKTIKOS  BUNGUBOX JAPANの刻印(KYKLOS GALAKTIKOSはギリシャ語で天の川の意)、ニブの刻印はInk tells more(伝えたい思いを ペンとインクにたくして・・・)と、サイドに字幅の刻印があるだけで、セーラー万年筆のロゴや錨マークはどこにもなく、ニブの14K585という刻印すらもありません(入れなくても良いらしい)。ここまでやるとオリジナル感が出て良いですね。




        ブングボックス オリジナル万年筆 ヴェガ&アルタイル 中細字


        左から天冠の螺鈿(ヴェガ)、非常にシンプルなニブ、尻軸の螺鈿(アルタイル)

 これと対になるのがMilky Wayという万年筆で、こちらはキャップと軸に螺鈿細工の天の川、トリムはロジウムプレート仕上げです。2本揃って七夕伝説なのでしょうが、一本だけにしました。どちらも100本限定品です。

 私が持っている限定品は、これ以外ではパイロット グランセNCの2016年限定カラーと、カランダッシュの849 アイコンのみかな。どちらも広く流通した物ですし、ベースモデルとペイントが違うだけの物で、ショップ限定のオリジナル品は、今のところこれ一本のみです。今のところね・・・。

 書き味についてはベースモデルのプロフィットスタンダード同様、硬い14Kニブですが、中細字はインクフローも割と良く、滑らかです。プロムナードの細字をすでに持っていたので、これは迷わず中細字を選びましたが、同じ造りのニブでも中細字と細字ではだいぶ違います(もしかしたらブラックIP仕上げのヴェガ&アルタイルと14K無垢のプロムナードではインクフローに違いがあるかもしれませんが)。細字以下はややシャリシャリした感触で筆記線は非常にシャープに出るでしょうね。プロフィットスタンダードやプロムナードもそうですが、書き味でお勧めなのは中細以上で、シャープな筆記線が望みなら細字以下という感じがします。

 さて、ここからは科学屋らしくいきましょうか。ベガとアルタイルのデータは以下の通り。

ベガ(ヴェガ)(織女星、織姫星)
 こと座α星、視等級:0.03、絶対等級:0.6、距離:約25光年、質量:太陽のおよそ2.6倍、半径:太陽のおよそ2.7倍、スペクトル型A0の主系列星。

アルタイル(牽牛星、彦星)
 わし座α星、視等級:0.76、絶対等級:2.21、距離:約16.7光年、質量:太陽のおよそ1.8倍、半径:太陽の1.6〜2倍程度、スペクトル型A7の主系列星。

 視等級は地球から見える明るさの等級で、値が小さいほど明るく見え、等級が5違うと明るさは100倍となります(等級が1違うと約2.5倍)。絶対等級はその星が10パーセク(32.6光年)の距離にあったと仮定した際に、地球でどれくらいの明るさに見えるかを表す等級で、星の実際の明るさを比較するのに役立ちます。スペクトル型Aは、表面温度が7,500〜10,000Kくらいの、白く輝く星です。主系列星とは水素の核融合が安定的に継続している星で、太陽も主系列星です。星のスペクトル型(表面温度)と光度(絶対等級)をプロットしたヘルツシュプルング−ラッセル図(HR図)上で、多くの星が右下(赤くて暗い)から左上(青くて明るい)にかけて線状に分布することから主系列星と呼ばれます。

 こうして比較すると、何から何まで織り姫の方が上です(笑)。女は強いってこと?・・やめておくか。でも人間と違って、長生きするのはアルタイルの方。星は誕生時の質量で寿命がほぼ決まり、質量が大きいほど短命なのです(燃料消費率が質量の3.5乗に比例するため)。二つの星はやがて主系列の時代が終わると膨張して赤色巨星となり、外層部を徐々に失って芯の部分が白色矮星となるでしょう。

 そして二人の間に横たわる天の川に翼を広げ、橋を架けているのがはくちょう座。そのα星がデネブで、ベガ、アルタイルと共に夏の大三角を形成します。そのデネブはというと・・

デネブ
 はくちょう座α星、視等級:1.25、絶対等級:-6.93、距離:約1400光年、質量:太陽の15〜16倍、半径:太陽の108倍、スペクトル型A2の白色超巨星。

 視等級(明るさ)はベガ、アルタイル、デネブの順ですが、絶対等級はデネブが突出して明るい。表面温度の高い大きな星なのでその光量は非常に大きいのですが、地球からの距離の桁が違うので暗く見えるのです(とは言ってもこんなに離れていながら1等星なのですからすごい)。デネブはベガやアルタイルと異なり、主系列の時代を終えて赤色超巨星になった後、中心部の重力崩壊から超新星爆発を起こし、星の外層部をはじき飛ばし、中心部は中性子星になると考えられます。


プロムナード(PROMENADE) 生産終了品(後継品プロフィットライトを発売)
14Kニブ、ネジ式キャップ、両用式

 プロフェッショナルギアの項でも触れましたが、金ペンエントリーモデルであるプロフィットスタンダードの初期型をベースに、コストダウンを図り、パイロットやプラチナ萬年筆のエントリーモデルと同じ1万円で発売したのがプロムナードです。プロフィットスタンダードよりも胴軸が若干長く、重量はちょっとだけ重く、ニブは14K無垢です。プロフィットスタンダードは24Kメッキなので、少しはコストカットしているとは思うのですが、パイロットやプラチナ万年筆が金ペンエントリーモデルを1万円で頑張っているのに対し、セーラー万年筆ではプロフィットスタンダードを1万2千円に値上げして苦戦を強いられたため、儲けを圧縮してでも同価格のプロムナードを投入してきたというのが真相なのでしょう。そしてパイロットやプラチナ萬年筆も、金の高騰には抗えず、近年エントリーモデルを値上げしてきましたので、プロムナードはその役割を終え、2020年8月で生産終了となりました・・と思っていたら、プロフィットライトという万年筆を、同じ1万円で新発売。メッキがゴールドIPになったり、バネ式のインナーキャップをやめたりとか、さらにコストカットをしている模様ですが、多分国産でも1万円(+税)で買える金ペンはプロフィットライトだけ。バネ式インナーキャップをやめたとしても、セーラーのネジ式キャップは気密性抜群なので、問題ないし、ゴールドIPも金メッキより優しい色合いで良いかも。

 基本的にはプロフィットスタンダードと似たような物で、私も両方を試しましたが大きな違いは感じず、より安価なこちらを選びました。プロフィットスタンダードにもカラーバージョンがありますが、プロムナードにはシャイニングブルーとシャイニングレッドという、魅力的な軸色が用意されていたのもポイントです。ラメ入りですが割と控えめで、フォーマルな場でもギリギリ使えるかな?というところです。ただ、全般的には若い人向きですかね。


        セーラー万年筆 プロムナード シャイニングブルー 万年筆 細字

 プロムナードの14Kニブは、同価格帯のパイロット カスタム74、プラチナ萬年筆 #3776センチュリーに比べ、硬く感じます。インクフローも絞られていて、細字はインクの潤滑作用もあまりなく、シャリシャリした書き味ですし、あまり柔らかさは感じません。ですが筆圧には耐えますし、フローが絞ってある分筆記線はシャープに出ます。万年筆に慣れた人には今更という感じですが、全く万年筆を持ったことのない人がいきなり金ペンを使うとすれば、選択肢の一つにはなるでしょう。そもそも万年筆初心者の若い世代向けに開発した商品らしいので、書き方にはかなり融通が利きそうです。筆圧が高めの万年筆初心者や、とにかく硬い感触を好む方にはお勧め品の一つで、これに慣れてからより上質な物へとステップアップするのもありだと思います。ただ細字以下に関しては個人的にはあまり好きな感触ではありません。私自身、中細字にしておけば良かったかなって思います。使い勝手は良いのでそれなりに使ってはいますが、私としては同じセーラー万年筆の14K細字でも、次項に記したDAKS ハウスチェックの書き味の方が好きだったりします。中細字以上だとフローも良くなり、滑らかな感じになりますから、プロムナードやプロフィットスタンダードは、個人的には中細字以上がよいと思います。

 プロフィットスタンダードを検討しているなら、廉価版とも言えるプロムナードも試してみると良いでしょうし(ズーム、ミュージックといった特殊ニブがお望みの方は除く)、実はプロムナードには、プロフィットスタンダードにはないバネ式のインナーキャップ(プラチナ万年筆のスリップシールと同じような物)が採用されていて、インクが乾きにくく、使い勝手が良いのです。一方で、より書き味の良い物を求めるならば、少々高くてもプロフィットスタンダード21にした方が柔らかな感触があって良いと思いますし、最初から上質の物を求めるなら、このクラスをまとめて飛ばしてプロフェッショナルギアとかプロフィット21がお勧めですね。この2つは最上級とまでは言えないかもしれませんが、クラス最高の、いや、その上のクラスにも全く引けを取らない書き味です。あえて14K中型ニブの細字にこだわるなら、私としては金属軸のDAKS レジェンドや、2017年に発売されたバルカロールの方が、より力を抜いて書けるので好きですね。


DAKS HOUSE CHECK CLOTH RING(ダックス ハウスチェック クロスリング) 生産終了品
14Kニブ、嵌合式キャップ、両用式

 DAKSは英国のファッションブランドで、ロイヤルワラント(王室御用達)を受けています。ならば何故セーラー万年筆のページに入っているの?って感じですが、これはDAKSから正式にライセンスを受け、セーラー万年筆が製造している国産品です。

 価格はプロムナードと同じ。でもライセンス料があるでしょうから、実質的には下のクラスです。ニブも14Kですが、プロムナードよりもだいぶ細くて小さいですね。でも、このニブは意外と私のお気に入りです。硬い感触ですが、プロムナードよりは柔らかく、筆圧を掛けると切り割りが開いて字幅が太くなります。そしてややシャリシャリとした感触がありますが、書き味自体は悪くありません。しかも日本語の書きやすさはなかなかのもの。逆にアルファベットをサラサラ書くのには少々向いていない感じで、一応外国ブランドなのに?って思います。インクフローは渋めで、最初にカートリッジを入れた際には、なかなか先端までインクがたどり着かず、難儀しました。もちろん一度たどり着いてしまえば切れることはありませんが、速筆すると掠れることもありますので、あまりサラサラッと書くのには向かないですね。書き味的にはプロムナードよりもこちらの方が好きです。なお、字幅は細字のみです。


        DAKS ハウスチェック クロスリング メタルシルバー 万年筆 細字

 軸は真鍮製で、細身ながらも若干重いです。キャップも重く、キャップをペン尻に挿すとややテールヘビー状態に。同じ造りのハウスチェック クロス(胴軸が布巻の終売品)やハウスチェック クロスレザー(胴軸が革巻き)は、キャップを挿すと布や革を傷めたり汚したりするのでキャップを挿さずに書くようバランスされていますから、クロスリングも同様なのでしょう。軸色はブラックの他、メタルシルバー、メタルブルー、メタルピンクの計4色。何よりもキャップリングとしてDAKSのハウスチェッククロスが巻かれているのがポイントで、これがワンポイントとなり、オシャレな感じです。同僚の若い女性も一目見て可愛いと言ってましたが、女性にも受けそうなデザインですね。海外ブランドのライセンス生産品とはいえ、国産には珍しいオシャレな万年筆です。持ち運び用としても重宝しますが、女性の普段使い用としても良さそうです。

 DAKSのインクはかなりレアですが、セーラー万年筆のカートリッジインクやコンバーターが使えますから、DAKSのインクにこだわる必要はありません。私も最初からセーラー万年筆の青墨を入れ、メンテナンスを欠かさずに使っています。ちなみにDAKSブランド品は、2022年に生産を終了しました。


四季織 ひさかた(SHIKIORI HISAKATA
ステンレスニブ、ネジ式キャップ、両用式 ボールペンはツイスト式

 元々はプロカラー500 四季彩(万年筆)とプロカラー300 四季彩(ボールペン、メカニカルペンシル)という商品名でしたが、現在は日本の四季を表した「四季織」という商品群の一つとなっています。四季の色を表した軸が魅力で、春は「さくら」、夏は「うちみず」、秋は「あかねぞら」、冬は「ほしくず」という色です。個人的には透明ブルーの「うちみず」と、ラメ入りブラックの「ほしくず」が好きですね。「うちみず」の万年筆とボールペンのセットで並んでいたのに一目惚れして、つい買ってしまいました。

 万年筆は細字のみです。軸は樹脂製で、オーソドックスなバランス型。書き味は硬い上、インクフローも渋めであるため、少々筆圧を掛けた方が書きやすいでしょう。と言うより、筆圧を掛けないと、インクの出が悪いです。しばらく使っている内に少しフローが良くなってきたものの、サラサラと書けるような感じではなく、ちょっとそこら辺が残念。開き直って顔料インクの青墨を入れ、会社でラベル書きなどに使っています。なお、四季織 ひさかた(旧プロカラー500 四季彩)の万年筆は細字のみですが、元は同じシリーズだった透明感 プロカラー500は中細字のみ。使ったことはないですが、恐らく中細字はしっかりインクフローしてくれると思います。


        セーラー万年筆 四季織 ひさかた 「うちみず」  上:ボールペン  下:万年筆 細字  コンバーターは別売

 ボールペンは良いですね。セーラー万年筆のボールペンはあまりなじみがないですが、書きやすいですし、なにより外国製にありがちな書き出しの掠れがありません。また、「うちみず」は透明軸ですから、ツイスト式ボールペンの内部構造が良く見えて面白いです。でも、ボールペンだけで良かったかな?。


透明感 プロフィットジュニア(TOMEIKAN PROFIT JUNIOR
ステンレスニブ、ネジ式キャップ、両用式

 透明感は、透明であることにこだわったシリーズで、軸やキャップはもちろんのこと、ペン芯も透明で、コンバーターまで透明感専用のもの(ピストンが透明で、つまみは黒でなく白)を用意するという徹底ぶり。ここまでこだわって造られると気持ち良いですね。バリエーションはプロカラー500、レクル、プロフィットジュニアの3種で、もちろん軸色の違いではなく、ランクの違い。こういうラインナップは珍しいですね。プロフィットジュニアは一番安いやつです。ビジュアル的にはカートリッジインクよりもコンバーターを使った方が良さそうです。別売のコンバーターはつまみが黒い通常タイプでも問題なく装着できるのですが、どうせなら透明感用のつまみが白いものの方が綺麗ですね。価格は同じなので透明感用がお勧めです。


        セーラー万年筆 透明感 プロフィットジュニア 万年筆 中細字  コンバーターは別売

 ニブはステンレス製で、中細字のみ。書き味はそこそこという感じですが、中細字は筆圧無しでもサラサラと書けるので、外観も考慮すれば意外とお勧め品ですね。プロカラー500 四季彩の細字ニブはフローが渋いのですが、こちらの中細字はしっかりとフローしてくれます。透明軸なので赤や緑、オレンジなどのインクを入れて使うと良いでしょう。軸はプロフィット系同様、バランス型の持ちやすいもの。全体として安い割には良くできていて、普段使いにはピッタリです。

 この万年筆は見ての通り、キャップにインナーキャップが入っていません。なのにインクは顔料インクであるストーリア ファイアー(レッド)という冒険じみたことをしているわけですが、実はなかなか気密性が良く、インクの乾きはほとんどありません。セーラー万年筆のネジ式キャップはなかなか優秀。それも含めて確かな技術力を持っているメーカーだとは思いますが、PRは下手ですね。プラチナ萬年筆がスリップシールを上手にプロモーションしているのに対し、セーラー万年筆は同様の機能を搭載したプロムナードでも謳っていない。インクが乾かないなんて当然でしょ?って感じなのですかね。プロフィット21やプロフェッショナルギアは、非常に良い万年筆なのですが、プラチナ萬年筆が#3776センチュリーをリニューアルした後は、売上が落ちたようです。書き味は断然プロフィット21やプロフェッショナルギアの方が良いと思いますが、#3776センチュリーは半額ですからね。