U-Maの音楽館

DELTA


DELTA(デルタ) イタリア

 1982年、南イタリアのパレーテで創業した、高級筆記具ブランドとしては若いブランドです。1900年代の初め頃にアメリカのシェーファーが開発したサイドレバー吸入式を復活させた他、ペンを差した際に布地の傷みを防ぐローリングウィールクリップ(クリップの先端部分がローラー状になっていて、布地を引っ掻かずに転がる)を開発するなど、アイデアにあふれた物作りと、細部のディテールや素材にこだわった万年筆作りで、一躍人気ブランドへと躍り出ました。代表作であるドルチェビータは、透明感のある美しいオレンジ色が目を惹きます。また、限定品の少数民族シリーズなども人気となっています。エントリーモデルのヴィンテージコレクションも、綺麗な軸色が魅力的ですが・・・

 2017年7月より、無期限の長期休業という状況となっています。作り手の不足と説明されているようですが、それ以前に倒産の危機と伝えられたこともあったため、資金繰りが苦しい上に、腕の良い職人が辞めてしまって二進も三進もいかないということなのでしょうか。とりあえず休業という形で再起を図っているようですし、再開した際にはこれまで取り扱っていた代理店が同様に輸入することとなっているようです。と書きましたが、残念ながら2018年2月、廃業となってしまいました。2018年版の輸入筆記具協会カタログからは外れていましたし、今後入荷することも無いでしょう。困るのが消耗品で、インクはもう、どこに行っても手に入らない状態。私はボトルを一つ、何とか入手しましたが、無くなり次第他のインクに切り替えるしかない状況。代理店としては、ペリカン、ウォーターマンのインク(カートリッジはショートサイズ)を推奨しているようです。ペリカンはデルタと同じく国際標準規格なので、カートリッジの形状は全く同じ。ウォーターマンもヨーロッパサイズで、国際標準規格のカランダッシュにウォーターマンのカートリッジを使って何の問題もありませんから、バッチリ適合するでしょう。コンバーターもヨーロッパサイズを採用しているメーカーのものが適合するでしょうから(一部合わないものはありそうですが)、慌てて購入する必要はないと思います。

 さて、そのデルタですが、創業者の一人であるチロ・マトローネ氏の息子、サルバトーレ・マトローネ氏がその技術を受け継ぎ、2018年、レオナルド・オフィチーナ・イタリアーナというブランドを立ち上げました。このブランドが、デルタ社のスピリッツを受け継いでいくと思われ、ファンからは注目されています。そして何と、2022年にはもう一人の創業者がデルタブランドを復活させたそうです。この2つのブランドは今後どのように展開していくのか注目です。


旧DOLCEVITA(ドルチェビータ) 絶版品
14Kニブ(旧タイプは18K)、ネジ式キャップ、両用式(ミニはカートリッジ式、ピストンフィリングはピストン吸入式)

 デルタの代表作と言えば、1997年に発売されたドルチェビータ。甘い生活という意味だそうで、透明感があり、なおかつ濃淡のついたオレンジ色の軸が南イタリアの太陽を連想させる、実に魅力的な一本。限定品として全体がオレンジ色のドルチェビータ オーロや、黒い模様が不規則に陥入したドルチェビータ マスターピースなどもありますが、私にはちょっと派手すぎるので、キャップ、首軸、尻軸が黒のオリジナルタイプを入手しました。ドルチェビータにはミニ、スリム、ミディアム、オーバーサイズの4サイズがあり(オーバーサイズはすでに中止していたはず)、私が入手したのはドルチェビータ スリム。スリムとは言っても軸径13mmでペリカンのM600とほぼ同じ、長さも似たような物です。ドルチェビータ ミディアムは軸径16mmとかなり太く、ではオーバーサイズはどれだけ太いの?と思っていましたが、どうやらミディアムよりも長くなりますが、軸径はほぼ変わらないようです。価格はそんなに変わらないのでどうせならミディアムとも思いましたが、中字しかないということだったので、スリムの極細と細字を比較し、細字を購入してきました。キャップには古代遺跡の彫刻を模したキャップリングが取り付けられており、この材質にはシルバーとバーメイル(純銀に金をメッキ、または金張りにした物)があり、シルバーはまさにいぶし銀の風格がありますが、私はバーメイルの方が華やかな感じなのでこちらを選びました。もちろんアメ横で購入です。この価格帯になると4割引というのは大きいです。しかも・・・大当たり品。


        デルタ ドルチェビータ スリム バーメイル 万年筆 細字

 ニブは14Kです。かつては18Kで今よりも軟らかかったようですが、14Kニブもそんなにガチガチではなく、滑らかで書き心地は良いですね。単に美しいだけの万年筆ではありません(但しこの個体は、何人かの万年筆ファンが口を揃えて大当たり品と言うほど滑らかな書き味の個体ですから、一枚割り引いて評価した方がよいのかもしれません)。重量はカートリッジ込みで23g。私はもっと重くても良いのですが、サイズも重さも万人受けするでしょう。初心者にも扱いやすいと思いますし、手の小さな女性でも普通に使えこなせるサイズです。そしてこの華やかな軸は、女性の手により合いますね。男性がビジネス用に使うには派手すぎる気がしますが、女性なら全く問題ない、いや、むしろオシャレで良いと思います。この色を見ると、デルタが特に女性に人気のブランドだというのも分かりますね。

 復興したデルタがドルチェビータを復活させたようですが、当時の物とほぼ同じなのか、微妙に違うのか、私には判断いたしかねます。旧デルタ品の修理は、代理店が国内で対応できる物について対応しておりましたが、デルタ社が復興した今、旧デルタ品にも対応してくれる? もし故障したらとりあえず販売店に持ち込んでみると良いかもしれません。