U-Maの音楽館
LAMY
LAMY(ラミー) ドイツ
1930年、パーカーの営業マンをしていたC.J.ラミーにより、ハイデルベルクに設立。当初はパーカー製品の影響を受けていたようですが、1962年に息子のM.ラミーが新社長となったのを機に、徹底して他社との差別化を図り、機能性を徹底的に追求した、革新的な筆記具を次々と発売し、現在に至ります。ラミーは設計士を複数名抱えており、そのデザインは機能の一部、機能を追求した結果と言えるでしょう。また、設計士が設計した物を忠実に再現するため、組み立てはもちろん、ほとんどの部品をハイデルベルクの自社工場で生産しております。近年の万年筆ブーム、オシャレ文具ブームの火付け役となったサファリは、本来ドイツの児童用万年筆で、持ちやすい形状、バランスの良さ、そしてどんな書き方にも対応できるハードなニブを備えています。2024年、日本の三菱鉛筆がラミーを傘下に置くことが発表されました。今後の展開が注目されるところです。
SCALA(スカラ) 14Kニブは生産終了
ステンレスニブ(ピアノブラックのみ14Kニブ)、嵌合式キャップ、両用式
スカラという名称はミラノ スカラ座に由来。ミラノのスカラ座からインスパイアされた筆記具で、オペラのような感動を・・という意味が込められているとか。
オールステンレス製の軸とキャップはヘアライン加工、クロムメッキ、ラッカー塗装、チタンコートなどの処理がされ、スプリング内蔵の機能的なクリップが取り付けられています。高級品らしく仕上げは美しいのですが、そのフォルムには一切の無駄がない。いかにもラミーらしい造りなのですが、これを機能美と捉えるか、遊び心が無く物足りないと捉えるかは人それぞれでしょうね。なお、万年筆はキャップを外した状態での筆記が最適になるよう重量バランスが設定されています。
ラミー スカラ L79PB ピアノブラック 万年筆 細字
ラミーはCP1、スカラ、ステュディオなどで、最上位モデルは14Kニブ、その他はステンレスニブという品揃えをしており、CP1などはプラチナコートとマットブラックでは4倍以上の価格差があります。スカラは少々事情が違い、それぞれ軸の仕上げが上質であるためそこまで価格差はないですし、困ったことに14Kのピアノブラックとステンレスニブのチタンが同価格というややこしい状態です。ボールペンはチタンの方が高いので、ニブに金をかけたピアノブラックと、軸に金をかけたチタンという構図になるのでしょうね。ただし、ラミーの公式サイトを見ると、スカラ自体は存続していますが、ピアノブラックもチタンも表示されていないので、どうやら生産終了か取り扱い終了という状態です。CP1 プラチナコートもどうやら同じ状況で、ステュディオには14Kのパラジウムコートが残っているもようです。スカラ チタンはともかく、スカラ ピアノブラックとCP1 プラチナコートは2020年のペンカタログにしっかり掲載されている物ですから、最近廃番になったって事かな(これを書いているのは2020年9月)。ステュディオは割とリーズナブルでよいのですが、プロペラ型のクリップがどうにも好きになれないので、私ならこちらを選びますね。
さて、肝心な書き心地です。ニブの形状は下のサファリとよく似ているのですが、書き味は全然違います。14Kとステンレスの違い、細字と極細字の違いは当然あると思いますが、下のサファリとは比べものになりません。インクフローが潤沢で、結構書きやすいですし、軸も重いので筆圧も不要。硬めのニブですが、良くできていると思います。サファリの極細はフローが渋くて少々筆圧を掛けないと書きづらいので(下の固体が特に渋いのかもしれませんが)、この差は歴然。これが廃番とは少々勿体ないなって思います。なお、あくまでもスカラの14Kニブの話で、ステンレスニブについては分かりません。興味ある方はご自分で確かめてみて下さい。
SAFARI & VISTA(サファリ)
ステンレスニブ、嵌合式キャップ、両用式
サファリはカジュアルなスタイルとポップな色使いで人気沸騰し、特に若い世代で万年筆の底辺を広げ、近年の万年筆やオシャレ文具ブームの火付け役となったモデル。そもそもはドイツの児童用万年筆。児童用は同じラミーのabcとかペリカンのペリカーノジュニアなどがありますが、それらはどう見ても児童用という感じ。その点サファリは児童用でありながら、そうは思えないほどスタイリッシュ。特にカジュアルな格好に合いますし、若い人がビジネスで使うというのも良いですね。年配の方ならもっと万年筆らしい物の方が良さそうですが、若い人ならこれくらいカジュアルな方が、嫌味もないですね。なお、VISTAというのは、日本でサファリ L12 スケルトンとして売られている物の正式名だそうです。他の色はサファリですが、無色透明だけは何故かビスタというらしいです。もちろん造りは全く同じ物です。
ラミー サファリ L12スケルトン 万年筆 極細字 コンバーターは別売
ドイツの小学校では先ず、児童用万年筆を使って万年筆の書き方を覚えさせ、ちゃんと使えるようになった子から順次、ボールペンやメカニカルペンシルを使わせるそうです。子供なので最初は変な書き方もするでしょうから、児童用万年筆はどんな書き方にも耐えるだけの強さを持っています。サファリがこれだけ受けている理由の一つには、その性質が大きく寄与しているでしょう。ボールペンのように押しつけて書いても壊れないのですから、どんな人が使っても書けてしまうのです。
初心者が使う万年筆としてお勧めの一本であると言われていますが、私としてはあまりお勧めはしていません(あくまでも私見です)。どんな書き方でも書けてしまうということは、裏を返せばそのままのスタイルで使い続けても問題なく使えてしまうということ。それでは万年筆の正しい書き方は身に付きません。首軸に正しい持ち方になるよう窪みは付けてあっても、そこを持って、ペンを立ててゴリゴリ書いたら何にもなりません。なるべくペンを寝かせて筆圧をあまり掛けずに書けば良いのですが、サファリの極細字や細字はインクフローが渋く、少し筆圧を掛けてやらないと、線が掠れたりすることがあります。カクノやプラチナ バランス、シェーファー100などは筆圧ゼロでもすらすらと書けるので、私としてはそういう物を使った方が良いかなと思うのです。
ただ、サファリを否定するわけではありません。ペンポイントは良く研がれていて引っかかりは何もなく、その点においては徹底して品質を追求するラミーらしい商品です。持ちやすく、割と書きやすく、しっかりとした造りの万年筆です。多くの文具店で取り扱っていますし、自由に試し書きできる物を用意しているお店もありますから、手にとって実際に書いてみると良いでしょう。