No.087 Petits ordre : Si bémol majeur [La pièce à trétous]
(小組曲変ロ長調「小屋掛け芝居のひとこま」)
 
第1曲:Seulement belle actrice(美しいだけの女優) Allegretto 4/4拍子
第2曲:Jeune homme de la partie de vieil homme(老人役の青年) Adagio 4/4拍子
第3曲:Musette de l'hoyden(じゃじゃ馬娘のミュゼット) Presto 3/4拍子
第4曲:L'acteur d'âge de milieu qui a été évité par une femme(妻に逃げられた中年役者) Adagietto 4/4拍子
第5曲:Pièce du singe par tous les jets(オールキャストによる猿芝居) Allegro scherzando 3/4拍子
 
MIDIでお題拝借・第57期投稿作品>
 
 F.クープランは27のクラヴサン組曲(オルドゥル)を書いていますが、組曲の中に小さな組曲を含んでいるものがあります。この曲はそうした<組曲の中の組曲>である「古い偉大な吟遊詩人組合の年代記」を参考に曲の構成を決め、全部の曲にお題(またはその変形)を入れて創りました。また、F.クープランの曲にはウイットに富んだ曲名が付けられていることが多く、それに倣って曲名を付けています。まあ、彼ほどのセンスはないですけど・・・。「古い偉大な吟遊詩人組合の年代記」は、F.クープランに組合費を要求する吟遊詩人組合への皮肉を込めた曲のようで、吟遊詩人とは名ばかりの大道芸人集団を、コミカルに描いています。
 
 全体のタイトルであるLa pièce à trétousは、F.クープランのオルドゥル第19番第1曲(善男善女)の別名として実在しますが、名前だけ頂いたもので、曲は関係ありません。「小屋掛け芝居のひとこま」と訳されますが、何かを見て書いたものではなく、あくまでもイメージの産物です。田舎の仮設の芝居小屋で演じられるドタバタ劇。そんなイメージだと思って下されば。しかし、曲自体はフランスのロココ時代の音楽を模倣したものですから、そこまでコミカルな感じではありません。それと・・・各曲にフランス語のタイトルが付いてますが、Yahoo!翻訳で訳したものですから正しくない・・・かも。おかしかったら指摘して下さい。
 
 楽器はチェンバロのみ。ピアノと異なり、強弱をあまり付けられない楽器なので、あえてヴェロシティは調整していません。第1トラックは右手(Panpot=84)、第2トラックは左手(Panpot=44)と、2段に分けて入力し、第3トラックは両方をマージ(Panpot=64)。左手と右手はHapsiHapsi2Hapsi3という3つの音色を使い分けてバフストップでの音色変化を擬似的に再現し、マージトラックは終始HapsiKSPという疑似ステレオ音色を使用し、音に広がりを持たせています。
 
 なお、この曲を聴いてあれ?っと思った方はさすが。楽譜は変ロ長調ですが、実際に出てくる音はイ長調???。バロックのチェンバロ曲を演奏する際には、A=415近辺で調律することが多く、A=440に比べておよそ半音ほど低くなりますので、ピッチベンドの調整によりそれを再現しています。
 
 
第1曲:Seulement belle actrice(美しいだけの女優)
 容姿は良いが、演技は・・・。優雅なアレグレットが、美しさを表現していますが、それだけ。深みのある展開をあえて加えず、軽い内容になっています。お題は少しだけリズムを変えていますが、原題に近い形で冒頭から登場します。
 
第2曲:Jeune homme de la partie de vieil homme(老人役の青年)
 役者が足りないのか、それともこの役者が一番まともなのか。若い役者が老人の役を演じています。左手は終始主音と属音を交互に四分音符で奏で、ゆっくりした右手の旋律が重なります。お題はマイナー化し、さらにリズムも少し変えてますが、3〜4小節目のフレーズがそれです。
 
第3曲:Musette de l'hoyden(じゃじゃ馬娘のミュゼット)
 急速なテンポの小さなミュゼットで、左手はほぼ主音と属音だけを奏で、右手は快活な旋律を奏でます。舞台の上を騒々しく跳ね回る女の子をイメージして下さればよろしいかと。お題はフレーズの前半と後半をそれぞれ2回繰り返す形で、冒頭から登場します。
 
第4曲:L'acteur d'âge de milieu qui a été évité par une femme(妻に逃げられた中年役者)
 コミカルな役を演じるはずが、妻に逃げられたショックで沈みっぱなし。中間部では旋律が変ロ長調になっても、低音部はト短調の主音と属音を延々と繰り返し、アンバランスになっています。お題は中間部に、マイナー化したものと元通りの音並びのものが、第1曲と同じリズムで登場します。
 
第5曲:Pièce du singe par tous les jets(オールキャストによる猿芝居)
 これらの役者が勢揃いし、ドタバタ劇を演じます。曲は両手とも終始細かい動きで、ややコミカルな感じも。中間部も3/4拍子のままですが、実質的には6/8拍子です。お題は変形しているので分かりにくいかもしれませんが、冒頭の旋律にその音並びを採用しています。